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TAR/ターのkrishnaのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.3
ケイトブランシェットが凄すぎてそれ以外あまり言うことが無いな。
ドキュメンタリーなのか演じてるのか分からないぐらい。圧巻なのが序盤パートの講義シーンの長回し。本当にワンカットか?つないでる?いずれにしても凄すぎ。ケイトの演技と全編を通して色々削ぎ落として彼女にだけフォーカスしたのが功を奏してる。


この脚本、性別を変えてジャックニコルソンやマイケルダグラスが主役を演じていたらどうなっていただろう?
ジェンダーの話にはしたく無いけど、テーマとして男が権力を振り翳して転落するのはよくある話。有力者が若い子に入れあげて取り立てるも女の子の方が一枚上手で素っ気なくされるのもよくある話。よくある脚本を女性権力者に書き換え、更にケイトだけに焦点を絞った。これがどハマりした感じ。
ある種異質な映画になってたが仮に男性主人公なら凡庸な脚本だし、主人公の狂気など微塵も感じ無いだろうな。よくあるお話だな。


エンドロールのようなオープニングからあのインタビュー。音楽史はバーンスタインやカラヤンぐらいしか知らないから何を言っているか分からんけど自然過ぎて聞き入ってしまう。
更に畳み掛けるように前述のワンカット講義シーン。ここまででめちゃくちゃ惹きつけられたのは監督の上手さ。
BGMを使用しない事によって、紙擦れや靴音など音に対する意識を意図的に高めるのは上手い工夫。

ケイトの演技にフォーカスする為に『誰に』話しているかの説明は極力排除し、ケイトが「何を』喋るかを映す。更に説明くさいシークェンスを省き、彼女が何をしているかのみを映す。
理由や時間の飛びの説明は無いから理解しようと否が応でも会話に集中する。よりケイトの演技力に引き込まれる。凄い仕掛け。

当初の予定では色々説明くさいカットがあったんだろう。
貧乏ゆすりの理由や子供の対応、パートナーの神経衰弱の理由や姉の存在、元カノとのやりとりなんかは撮ってたんだろうけど全部落としたんだろう。俗物さが消えて孤高の感じが出ている。

ある意味これだけ振り切った監督の才能なのかもしれないな。
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