Jun潤

女子高生に殺されたいのJun潤のレビュー・感想・評価

女子高生に殺されたい(2022年製作の映画)
3.9
2022.04.07

『帝一の國』古屋兎丸原作×城定秀夫監督・脚本×田中圭主演。
なんだこのちょっとわかりみがあるタイトルは…、観るしかないじゃないか。

二鷹高校に赴任してきた東山春人。
彼の願いは女子高生に殺されること。
春人の求める「彼女」がいる2年C組は、彼の目的に翻弄されていく。

お話としてはめっちゃくちゃ面白かった。
あと『君が落とした青空』では気付けなかった、というより今作で京子を演じた莉子ちゃんめっっっちゃ可愛い。

序盤はイケメン新任教師に浮足立つ女子高生の日常と、春人のモノローグで語られる彼の過去と目的とその遂行。
「自分が殺されることを妄想する」オートアサシノフィリアという異常性癖を持つ男と普通の女子高生たち、およそ関連があるとは思えない2つが交互に描かれ、どちらを主軸として観ても互いが互いのノイズとなっている構成に惹き込まれました。

そして中盤から登場する春人の元カノでもあるカウンセラーの五月が赴任してきたことにより、明らかとなっていく日常に潜んでいた恐怖。
序盤の伏線が回収され、春人が近付いていた女子高生たちの、春人が作る舞台上での役割が明らかとなり、きたる11月8日の文化祭へ向けて物語は最高潮へ。
出オチ、タイトル詐欺もありそうな題材でしたが、この話の持っていき方は印象に残りますね。

各キャラについても、道ゆく可愛い女性に目を引かれるなんて男として共感を禁じ得ませんが、その対象に殺されたいとは、共感性に全く繋がりませんでしたし、その異常性に対して過去のトラウマや母の愛情に対する解釈などで理由付けもされていて、いいキャラクターに仕上がっていたと思います。

そして今作の城定監督は何を隠そうピンク映画の巨匠。
女性の演出はピカイチでしたね。
レーティングはPG12でしたがさすがに女子高生の濡れ場はまずい。
しかし繊細なフェティシズムや細かい仕草の描写から心情を伝えてくる演出は圧巻でした。
それもあって、春人の計画の根幹に関わるところについてはそちらに引っ張られていましたが、それ以外は一般的な女性の心情が積み重なり親近感の湧くキャラ造形でした。

城定監督のもう一つの持ち味、独特なテンポの会話劇については、シリアスでスリラーな雰囲気が漂う今作では鳴りを潜めていましたが、過去の春人がカメラの前で独白するシーンはその画角と切れたBGMが合わさって味が出ていましたね。

終盤に描かれたのは、死から逆算した生きる意味。
この考えにはとても共感できますし、なるほどなと思いましたが、いかんせんそれまでの描写が足りなかった…、春人が終始殺されたいだけでなく殺されるために生きることを強調していたらと思うと本当に惜しい。
さらにはそのメッセージよりも、五月の存在や、真帆のそばにいたあおいと、想いを伝えることではなくそばにいることを選んだ雪生とのリンクなど、愛情の描写の方が強くなっていました。
個人的には死生観の方がメッセージとして好きなので、こっちが強調されていたら評価は爆上がりでした。

自分だけを好きになってくれたはずの大好きな先生が突然目の前に首を吊って現れる、そんなトラウマ全開なことがあっても数ヶ月で舞台で相手役を演じた男の子とお付き合いするなんて、京子アンタ強い女だよ。
これが田中圭ではなく藤原竜也だったら最後死んでた。
Jun潤

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