Jun潤

違国日記のJun潤のレビュー・感想・評価

違国日記(2023年製作の映画)
4.0
2024.06.11

新垣結衣主演作品。
他にも夏帆瀬戸康史染谷将太と、好きな俳優さん達が勢揃いしているので、期待を高めて今回鑑賞です。

交通事故により目の前で両親を喪った少女・田汲朝。
突然の両親の死に涙することもできず、葬式では朝の引き取り手のことではなく、彼女の両親が籍を入れていない事実婚であったことで話題は持ちきり。
そんな朝を引き取ることになったのは、姉を憎んでさえいた小説家で叔母の高代槙生だった。
綺麗好きな母とは正反対で掃除が苦手、専業主婦だった母とは違って自分で生計を立て、結婚せずに昔からの友達と大人になっても仲良くしている槙生の存在は、朝が初めて関わる“違う”大人。
高校に進学し、世界や価値観が広がっていく中、指針としたかった母を喪失した悲しみからなかなか抜け出せずにいる朝は、どのように成長していくのかー。
そして槙生は、過去の確執から姉の娘である朝に対して無償の愛を捧ぐのではなく、1人の人間として関わっていくが、勢いで行動してしまいがちな性格もあり、悩んだり、朝と衝突したり、周囲の人々に支えてもらったりしていて……。

事実婚に始まり、養子縁組ではなく後見人制度を利用した母でも叔母でもない新しい関係、バリバリ働く未婚女性、同性愛など、多様性モリモリだけど邦画らしさ全開のハートフルヒューマンドラマ。
朝と槙生は、愛情や友情でもない、また違った感情で繋がっていたんだろうなと思えました。

今作はとことん朝と槙生が対比して描かれていた印象です。
両親を亡くし、悲しみに打ちひしがれる間もなく高校進学、新たな人間関係、新しく始めること、より広がった社会に揉まれて思うようにいかない中でもがく朝。
小説家として成功し、中学時代からの親友や元カレとの関係も良好で、芯の通った考え方も持っている、だけど勢い任せな性格故の苦悩や、確執のある姉の子どもに対してどう接するのが適切なのかを模索している槙生。
単純に両親を喪った可哀想な少女と支えてくれる周囲の大人という構図ではなく、朝と槙生、これまでのセオリーともまた“違う”2人の人間関係が如実に描かれていました。

しかしそんな対比して描かれた朝と槙生にも、朝の母であり槙生の姉・実里という、共通している部分もありました。
1人の女性に対して正反対の印象を持ち、それらを譲り合うことも受け入れ合うこともせず、あくまで違う考え方としてお互いに持っていたとしても、やはり突然いなくなってしまったことに対するやり場のない怒りや戸惑いはあった。
朝にとって将来の指針となるべき存在はおらず、代わりになり得る槙生は自身の人生に少なからず影響を与えた姉の言葉が頭から離れない。
そんな2人の同じ心情を、喧騒の中で突然感じる孤独として明確に描いていたのも印象的でした。
朝や槙生に対し、周囲と同じであることや目立ち過ぎないことを暗に押し付けていても、何らかの事情で病院通いをしていたり、籍を入れずに事実婚をしていたりと、実里にもなかなかのドラマがありそうですが、それらを匂わすだけに留めてこちらの想像を掻き立ててきていたのもなかなかの評価ポイントです。

たった一場面登場するだけの弁護士役に染谷将太を起用するなんて贅沢な使い方したなぁ。
Jun潤

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