Jun潤

モリコーネ 映画が恋した音楽家のJun潤のレビュー・感想・評価

4.0
2023.01.16

ポスターを見て気になった作品。
数々の名作映画の音楽を担当したエンニオ・モリコーネの半生をドキュメンタリーで描く。
昔の映画には疎いですが、最近個人的にアツい音楽を題材にしたドキュメンタリー、そして映画音楽となれば映画好きとして観逃すわけにいかない。

その才能と仕事ぶりに多くの著名人が驚愕し、賞賛する音楽家エンニオ・モリコーネ。
彼と音楽、映画音楽というジャンルの開拓、いくつもの作品や幾人もの人との出会いなど、エンニオの音楽と仕事に対する想いをインタビューと当時の映像、本人の述懐で映し出す。

これはもうエンニオ・モリコーネという人物そのものに対するスコアですね。
舐めていた、わかっちゃいたはずなんだけど全然知らなかった。
映画を彩り、時に作品そのものとなり、時に作品以上の意味を持ち、作品や映画の枠を超えた芸術、文化にもなり得る。
そんな映画音楽の存在を一層押し上げた人物と、つい最近まで同じ時代を生きていた事実に驚愕するとともにひたすら感謝ですね。

昔の映画にも、イタリア映画にも疎いのでエンニオ・モリコーネが関わってきた作品の中に知ってるものはあるかなーと思っていましたが、終盤に『ニュー・シネマ・パラダイス』が出てきて嬉しかったですね。

音楽の良し悪しもそこまで深く理解できませんが、映画作品内における音楽の足し引きについては最近少しわかるようにはなってきましたし、邦画で言うところの場面前提の商業的劇伴局と比べると、同じ意味の単語かもしれませんが、サウンドトラックは違うんだなと言うことがなんとなくわかりました。

今作で描かれたもの、それはエンニオ・モリコーネという人物、映画音楽、そして仕事に対する熱意そのものだったのではないかと思います。
ドキュメンタリーはエンニオの幼少期から始まりましたが、音楽に対する強い想いも特別光った才能があるわけでは無く、親の言う通りに、中古のトランペットから始まったエンニオの音楽は、やがて映画音楽につながり、一つの芸術になっていく。
師匠との出会いや一緒に仕事をする様々な人との出会いを通して、いつか辞めるいつか辞めると考えながらも真摯に映画に向き合い音楽を作り出し、枠に収まらず型に嵌まらず、ただただ必死に映画と音楽に向き合い続けた結果がエンニオの人生となり、ベートーヴェンやバッハ、シューバルトのように、時を経ても語り続けられる偉人になっていくのでしょう。
それは決して特別な人に奇跡的に起こることでは無く、熱量をもって何かを成し遂げ続ける人に必然的に起こることなんだと感じました。
Jun潤

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