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モリコーネ 映画が恋した音楽家のPDfEのレビュー・感想・評価

4.4
モリコーネによる音楽講義。

自分にとっては『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』に代表される美しいメロディーを書く映画音楽作曲家、という認識で、映画音楽とニ軸と言ってもいいほどに現代音楽の作曲をしていたというのは知らなかった。具体音の導入や民族音楽と讃美歌の融合など毎回新しいアイデアを持ち込んでいた様子が描かれていて、単なる劇伴ではなく音楽の進化を目指した偉大なる作曲家というように認識が塗り替えられた。

映画音楽は絶対音楽に対して低俗なものとみなされ、映画界においても前人未到の功績を残しながらアカデミー賞に嫌われる。その孤独感の中で傑作群を次々と生み出すメンタリティは想像もできない。映画の中で人柄が語られる場面は多くはなかったが、2000年代に入ってようやく絶対音楽・映画音楽双方と和解を果たした時の周りの様子から、謹厳実直な職人のような人だったのだろうと思う。映画音楽史だけでなく、現代音楽史そのもののような人生。

まだ観たことがない名作映画が沢山あることにも気づく。何より、名曲たちを映画館の大音量で聴くことができたのが幸せだった。

それにしても、原題の『ENNIO』から日本で広く知れ渡っている『モリコーネ』に変えたのはまあいいとして、サブタイトル酷すぎる…。
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