そうめん

神々の山嶺のそうめんのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
4.2
最初の山岳の遠景カットを目にして、これは!と期待が確信に変わりました。フランス制作サイドの深い原作愛によって、本作がきわめて誠実な映画として生まれたことは大変喜ばしいです。谷口ジロー本人含め日本の原作側も制作に深く携わったようですが、昭和の東京の雰囲気や日本人の造形に違和感がなかったのはちょっと驚きました。
マロリーがエベレスト初登頂に成功したのかどうか?という謎解きを導入に話は始まりますが、まあそれは撒き餌のようなもので、本作はずばり山そのものの言い表しがたい魅力、崇高さ、恐怖を、山に狂わされていく男たちを通してストレートに真摯に描かれています。
アニメ画にもかかわらず足元がすくむ怖さは一体どういうことでしょうか?戦闘シーンなどと違い動きは静かだし、ロングショットも多用せざるを得ないのに、これだけ魅せることができるのはすごいことです。さらに恐怖映画並みに恐ろしい音響が加わります。山で嵐に閉じ込められたシーンは映画館の大きいスクリーンと大きいスピーカーで体感するに限ります。
エンドロールの頃には、観ているこちらも疲労困憊なのでありました。