HAYATO

神々の山嶺のHAYATOのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
3.9
2024年132本目
谷口ジローさんによる山岳コミックの傑作を、フランスでアニメーション映画化
記録上に残るエベレストの初登頂は1953年だが、それよりも先に伝説の登山家・マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げていたかもしれないという未解決の謎。ある時、カメラマンの深町誠は、何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。羽生を見つけ出し、マロリーの謎を突き止めようと考えた深町は、羽生の人生の軌跡を追う中で、危険な登山に挑み続ける羽生という男の人間性に魅了されていく。
コロナ禍にも関わらずフランスで13万人を超える動員を記録し、第47回セザール賞アニメーション映画賞並びに第27回リュミエール賞最優秀アニメーション賞受賞を果たした。IMDbでも7.5点というかなりの高スコアを収めている。
監督のパトリック・インバートは、幼き頃から日本のアニメを見て育ち、特に高畑勲さんの作品に影響を受けているそうだ。
フレンチアニメだが日本語吹替もあり、堀内賢雄さん、大塚明夫さん、逢坂良太さん、今井麻美さんら豪華声優陣が揃う。
2016年に岡田准一さん&阿部寛さん主演で実写映画化されていたそうだが、そちらは未見。
実写に全く引けをとらないどころか超えてしまっているのではないかというくらいの山々の壮大な描写が見どころ。人間の微小さを際立たせるワイドショット、山の高所で宙吊りになったときの緊迫感、嵐や吹雪が容赦なく襲いかかる冬山の猛威。美しさと恐ろしさの両面を兼ね備えた自然を存分に体感できる。
昭和、平成の東京の街並みも見事に再現されていて、本作が外国映画だということを忘れてしまうくらいだった。監督曰く1960年代の日本を描くにあたっては、小津安二郎監督の『お早よう』を参考にしたそう。
人類未踏のチャレンジに挑む羽生とそれに同行する深町の深層心理に迫った本作に、人間の飽くなき好奇心と探究心の凄まじさを垣間見た。
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