Rebecca

仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダルのRebeccaのネタバレレビュー・内容・結末

1.0

このレビューはネタバレを含みます

 仮面ライダーオーズそのものに泥を塗った最低最悪の作品。
言葉にしがたい嫌悪感を覚えた作品は人生で初めて。
 ストーリーの破滅的な流れで見逃されがちであるが、そもそもTVシリーズに参加していた人間が作ったとは思えない世界設定の破綻っぷり。


オーズドライバーが何で二つあるの?
どうやって王は復活したの?
グリードは?
アンクは?
なんで復活したの?
なんでメダルくっついたの?
テレビ最終回で恐竜メダル砕けてたよね?
なんで恐竜メダルをアンクが掴めてるの?
直近のオーズ出演作、平ジェネfinalの描写を見る限り少なくとも、ゴースト、エグゼイド、鎧武、フォーゼと世界観共通っぽいけど、みんな死んだの?


 そもそも、王にほとんど世界を破壊された世界なら、TV本編で出てきた数多くのゲストキャラクター達もみんな死んでいることになる。これを正史と認めてしまうと、TV本編を見直す際、ほとんどのキャラクターに対し、「この後亡くなったんだよね......」と思わなければならない。


「 ……どんなに遠くても届く、俺の腕!力!もっと……もっと!......もう、叶ってた。お前からもらってたんだ。一度も言ってなかったよ。アンク…………ありがとう」(TV本編第46話より)

映司にとって、オーズとは、求めていた力そのものであり、自分の無力さを呪って生きてきた彼にとって夢のようなギフトだった。この力があれば、あの時救えなかった人たちを救える。
そんな風に考える映司が、王にボコボコにされた上、ほとんどの国民が死んだ後、女の子一人助けただけで、満足げに死ねるとは思えない。
しかも、アンクの前で。
まったくの解釈違いなのだ。
これがもし、手元にオーズドライバーもない状態で、生身で助けた、という展開なら多少の納得はいく。それでももちろん、多少の納得だ。
そもそも彼は最終回で悟っているのだ。

「俺が欲しかった力…… どこまでも届く俺の腕…… それって……こうすれば手に入ったんだ」(TV本編最終話より)

自分じゃどうしようもないと思ってた、人の枠を超え、怪物になりながら、必死に伸ばしても届かない腕。そんな腕も、人と人とが、仲間同士で手を取り合って助け合えば、きっとどこまでも届く。一人で抱え込んで、怪物になんかならなくても。
この結論に、約50話かけて彼は至ったはずなのに。
それなのにそもそも、なんで単騎で王に挑んで、負けて、一人だけ助けて、死んで、満足する。そんな男に成り下がってしまったのか。理解ができないのだ。


 ライナーノートを読むに、この作品が作られるきっかけは、渡辺さんたちキャスト陣の呼びかけであることがわかっている。
基本キャスト達の提案でないと、周年作品は積極的に作られるものではないらしい。
キャスト陣はかなりのやる気であったことがうかがえる。
この時点で武部Pがそこまでこの企画に乗り気だったのか疑問が浮かぶ。
キャスト陣の熱意に根負けし、仕方なく作ったという印象をどうしても受けてしまった。
小林靖子氏は続編の脚本を基本やらないことで有名だが、

「TV本編の途中をアンク視点で描くのはどうか」

と提案はしてくれていたらしい。
ここからどうやってディストピア+アンク復活+映司死亡を描こう!となったのかわからない。
アンク視点で物語が進む、という点だけ適当に拾われたことがこの話で分かる。

やる気を全く感じないのだ。
あきらかに低予算なのが見て取れる映像。人間の新規キャラクターがいない。完全新規スーツはタジャニティコンボエタニティのみ。バースの出番の少なさ。グリードの出番の少なさ。などなど......



そもそも、先の話、未来を描こうという気概を感じないのである。
世界を崩壊させたら、TV本編後の人間関係などを具体的に描かなくて済むし、ロケ地も適当な更地とレジスタンス基地でほとんど済ますことができる。新規キャラクターを出さなかったら、その人物の設定を考えないで元からいたキャラクターを使いまわして適当に会話させるだけで済む。



基本続きモノは新しいキャラクターがその世界に飛び込んで行って、既存キャラ達の関係性をかき乱しつつ彼らの胸の内、TV本編で培われてきた信頼関係を映し出す展開がお決まりであるはずなのだが、こちらの作品ではそれがない。
(「さらば、電王」の野上幸太郎。「仮面ライダー555 パラダイス・リゲインド」の胡桃玲菜など)
一応、ゴーダがそれにあたるのだが、当然憑依している形なので俳優はいないし、そもそも強奪のゴーダって......奪うのウヴァとポジション被ってるし......設定作りにやる気を感じない。


こちらの映画公開の直前にされた仮面ライダー人気投票でも電王ダブルに次いで三位の人気であったはずなのに。

「こんなに人気だと思わなかった。予算もちょっとケチっちゃった。ごめん」

なんてライナーノートでいわれても落胆が加速するだけなのだ。
おそらく制作側とキャスト側での熱意に大きな差があり、齟齬が生まれた可能性が高い。当てつけにあえて武部Pはこのような展開にしたのだと思う。


脚本家はキタムランドのあの人なので、別に元から期待していなかった。なので逆に脚本家に対しては怒りがわいてこなかった。


 キャスト陣もこの結末に満足していないどころか、むしろ否定的であるみたいだし、周年作品を作るのがめんどくさくてこの展開にしたのなら、武部Pの狙い通り、彼らはもうオーズに関わることはないだろう。本当に悲しい。


 仮面ライダーオーズという作品は、小さいながらにリアルタイムで視聴し、そのストーリー展開に感動して、初めておもちゃを全部買いそろえてもらった私にとっても大切で、一番好きな仮面ライダーだったのだが、これを正史とするのなら、一番嫌いな仮面ライダーであると言わざるを得ない。
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