Maoryu002

評決のMaoryu002のレビュー・感想・評価

評決(1982年製作の映画)
3.9
落ちぶれた弁護士フランク(ポール・ニューマン)は医療ミスの事案を示談で済ませるつもりだったが、病院で植物状態の女性を見て正義のために戦うことを決める。裁判の相手は百戦錬磨のコンキャノン(ジェームズ・メイスン)だったが、酒場で知り合ったローラ(シャーロット・ランプリング)と相棒ミッキー(ジャック・ウォーデン)とともに裁判に挑む。

酒浸りで荒んだフランキーは最初は金のための仕事で、被害者のことなど見ていないのだが、横たわる被害者の顔を見て意識を変える。この「目覚め」が、ちょっとあっさりすぎるのだが、それでもその後のわき目も振らない邁進ぶりはグッとくる。

特に最終弁論で陪審員に「正義を願うならば、自分を信じて行動してほしい。誰の心にも正義はあるのだから」と語り掛ける姿は感動的だ。
法廷や弁護士は象徴であって、人間こそが正義という言葉は、しばしば大企業などの強者が弱者を飲み込んでしまう法制度への警鐘なのかもしれない。

全体的にシドニー・ルメット監督らしい重く静かな雰囲気が続く。同監督の名作「十二人の怒れる男」や「セルピコ」に通じるものがあった。
そしてポール・ニューマンが、それまでとは違ってヒーローでもなく、カリスマ性もない初老の弁護士を情熱的に演じている。酒を飲みながらピンボールにふける姿で、フランキーの生活や心情を表現しきっていた。

脇役も素晴らしく、「十二人の怒れる男」「天国から来たチャンピオン」「チャンス」など、多くの作品に出演しているジャック・ウォーデンが相棒のミッキーを演じ、「スタア誕生」「天国から来たチャンピオン」などでいつもスーツが似合うジェームズ・メイソンが敵の弁護士を演じている。
さらに、この後「シルバラード」「クロスロード」で印象を残すジョー・セネカも少しだが登場していたのが嬉しかった。
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