凛太朗

評決の凛太朗のレビュー・感想・評価

評決(1982年製作の映画)
3.8
医療ミスによる訴訟問題を題材に正義の在り方を描く法廷ドラマ。
監督は社会派の映画を撮り続けるシドニー・ルメット。主役の酒に溺れ落ちぶれた弁護士役にポール・ニューマン。

新聞の死亡欄を読み漁り、仕事になりそうと見るや否や、葬儀場にまで乗り込んで営業を仕掛け、アルコールにどっぷり浸かってしまっている初老の弁護士ギャルヴィンが、カトリック教会が設立した病院の医療ミスによって植物状態に陥った妊婦の訴訟を請け負い、初めは穏便に示談で済ませる予定だったけれど、呼吸器に繋がれた被害者の姿を見て、真実の行方、正義の在り方を見つめ直すべく立ち上がるってお話。

ロバート・レッドフォードがアルコール依存症が自分のイメージと合わないからという理由で主演を蹴ったらしいけど、だからと言ってポール・ニューマンのイメージに合うかといったらやはり違うと思うんですけど、それでも素晴らしい演技をするのがポール・ニューマン。
ご本人も「初めてポール・ニューマン以外の人物を演じた。」と言って満足している様子。
シャーロット・ランプリングが所謂ファム・ファタール的な立ち位置で登場し、やはり好演してますが、この頃のシャーロット・ランプリングが若い。そして綺麗。
個人的にはギャルヴィンのアドバイス役であるミッキーを演じたジャック・ウォーデンの役柄もすごく好き。

個人的には、医療ミスとそれに伴う単なる訴訟問題ということ以上に難しい問題を扱ってる映画だなと思います。
それは、人工呼吸器に繋がれた人間の尊厳にも関わってくることだし、それを看る家族の心情もあって、法律家の単純な正義感では語れないものだと思うんですよ。
同じ弱者でも、ギャルヴィン、シャーロット、被害者家族、病院の受付役では、それぞれ違った価値観があって、それぞれが正義感の前に自分が生きるためにしなければならないこともやっぱりあるんですね。
だから、ギャルヴィンの起こした行動なり下した判断が、結果こそ良かったとはいえ、必ずしも正しいことだったとは言い切れない難しさがあると思うんです。
描き方としては間違っていない、寧ろ希望を感じさせてよかったと思うんですけど。

後半のギャルヴィンの最終弁論シーンは、シドニー・ルメットにとってもポール・ニューマンにとっても屈指の名シーン。
長回し気味のカメラワークも含めて非常によかった。
そこはかとなくオーソン・ウェルズの『市民ケーン』からの影響を感じました。特にローアングルからのカメラワーク。
凛太朗

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