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ケイコ 目を澄ませてのさのネタバレレビュー・内容・結末

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

怒号(トレーナーの叱咤)と轟音(電車)に惑わされず自分の居場所を持っているケイコが眩しい。この映画では、雑音が強調されながらもケイコに無視されることで、そもそも聴者と聾者とでは、生きている世界が全く異なることが感じ取れるようになっている。だから、無理に聴者の世界に引き込もうという極めて偽善的な試みとは無縁である。しかし、そうした前提がある傍らで、聴者と聾者のあいだには幾つもの通じ合える点があるのだが、それを私が特に感じたのは例えばミッド撃ちや会長との稽古、またダンスといった非言語的なやり取りを見たときだ。反対に言えば、手話さえ使えれば、日本語さえ届けば通じ合えるというのは聴者の傲りかもしれない(手話を使える弟にも、ケイコは悩みを打ち明けない)。だから他ジムの女性会長が手話の勉強をアピることも、日本語を正確に伝えるタブレットをこれ見よがしに使ってみせるのも、実はかなりイタイのだと思う。もちろんそれらが必要な場合の方が多いのだが、そういう傲慢さがあるのは問題。
ところで表情も重要な表現手段となる手話では、コロナ禍でのマスク着用は色んなところで大変だったはずだ(もちろん今も)。ケイコも職場で話す時は、マスクをずらしていたと思う。
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