これは「生活者の映画だ」と思った。
ケイコや周囲の人たちは、映画の中のフィクションの「キャラクター」ではなく、本当に存在しているように感じたからだ。
朝が来て、昼が来て、夜が来て、また朝が来る。
川の流れのように不可逆的に進んでいく時間の流れが、確かに16mmフィルムに焼き付いている。
説明的なシーンがほぼないのにも関わらず、ケイコの生活の中にボクシングがあり、それが彼女を支えていることを映画が雄弁と語っていることに感動した。
荒川を中心とした町の風景、「宝くじ当たった」話を代表とする一見本筋とは関係のない話、ケイコが練習着を洗濯機に突っ込む一連の動作。
それぞれの日常が積み重なって、ボクシングのシーンに厚みが出ている。
彼女がミット打つ、そんな何気ないシーンでも心が動かせるんだもんな。すごいわ。