2022ベストでいろんな方が挙げていて、
まぁ相当高いハードルを掲げて観てきました。
これがどれくらいの狙いなのかわからないけれど、
耳の聞こえないケイコの生活が、
マスクをつけた人で溢れるコロナ禍の東京と
不思議な呼応をしていて、
地に着いていながらも埋めがたい空虚さが
セリフも設定も少ない中を支配してる。
だからこそケイコが書くその文字が重く、
ケイコが抱える本当の問題に気づかされる。
プロテストはすでに受かっていて2回も勝っている。
でも素質があるわけでもないらしい。
本来なら物語のゴールたりえる部分をすでに経て、
さて次はどうしようかという部分が今作のケイコだった。
一方ではコロナの影響に悔いを残しながら
ジムを閉める決断をせざるを得ない会長。
これは本当に私自身が事業を諦めたこともあって、
広報のための文章を書いたり馴染みの場所を去ったりってくだりは
まさに去年の自分と重なってて泣きました…
セリフに頼らぬ見事な演出で、
ボクシングにすら雄弁に語らせることはせず、
孤独さとかすかな交わりとが
ボディーブローのように効いてくる。
なかなか説明できないのだけど、
いつまでも余韻の残る傑作でした。