このレビューはネタバレを含みます
Amazonプライムにて鑑賞。
いやあ、、これ去年から気になっていたのですが
終始気持ち悪い。が故に最高だと思います。
ホラー映画はこうでないと、、、
色々と考察しがいがある作品だなと言う印象でしたね。
主人公と老婆を演じていた方が同じと言うことだったので、
"若さは永遠じゃない、いつかは老いる"というテーマのもと、エックス、つまりは老婆自身が若き日の自分に主人公を重ねたと言う交差の意味でのタイトルだったと言う考察を拝見しました。
ただ、個人的にはそう思えませんでした。
そもそも本作って"若さは永遠じゃない、(主人公も)いつかは(老婆のように)老いる"をテーマにしてるんでしょうか?
個人的には全くそう読み取れませんでした。
極端に言うと、
敬虔なカトリック(【清純派】のメタファー)を皮肉っためちゃくちゃ尖った作品なんじゃないか、と。
というのも簡単で、
主人公たちは「セックスと愛は別」「カメラが回ってりゃフィクション」「いつかやれなくなるんだから今のうちにやる」と、
自由意志を大事にしながら今の若さを謳歌するかのように生きてます。
対して老婆は敬虔なカトリック教徒、クリスチャンです。
それはつけたテレビからも読み取れますし、
老夫婦の最後の情事の前の会話からもそれは読み取れます。
また、主人公やその前に殺したヒッピーたちを「アバズレ」「ビッチ」呼ばわりするなど明らかに婚前性交渉する人たちを疎んでます。
で、これが大事で、
「自分は生涯決めた伴侶としかやりません」という足枷のせいで【若い頃の時間を謳歌できていない】んです。
どういうことかというと、
あの若さが故の美貌や肌のハリがあれば、
いくらでも誰かとセックスをすることができる。
しかし歳を取ればそれは難しい。
彼らは若い頃、恋に盲目で、かつ宗教上の理由で、お互いだけを求め合ってきたのでしょう。そしてそれが正しいと思っている。
しかし、歳をとってお互いセックスすることもなくなり、旦那からは心臓に悪いから、と断られる日々。
あの若さが懐かしい、あの若い頃に戻れたら、もっとたくさん謳歌できた、
そういう考えがよぎるんです。
だから、【今この若い時を謳歌している主人公たち】を"妬んでる"んです。
なぜそこまで言い切れるのか、は時代設定が70年代ということですよね。
ヒッピーに始まり自由意志のもと生きてゆく若者たちが増えてきた事に、
古い価値観はついてこれないのです。
これは善悪の概念でなく、適応性の問題です。
平たく言えば、『これがありなら自分達もそうしたかったよ!羨ましい!』です。
ただ、自分はもう老いてしまってる。
頼みの綱の旦那とはもう寝れない。
だから、アバズレ、と罵って妬むんです。
これ結構尖ってていいな、と思ったのは
今の時代でも言えますよね。
著名人や芸能人の不倫問題にやたら一喜一憂したり物申したりする人達。
別に誰かが不倫しようが、誰と寝ようがその人の人生には1ミリも影響なんてないはずなのに、
なんか謳歌してるようで、ムカついてるんです。
『一途以外悪だ』という正義を振りかざす事で自分の妬む気持ちを落ち着かせようとする。
そう言った者たちへ向けた作品なんじゃないかと思いました。
皮肉の具合が良すぎて脱帽です。
それを証拠に、主人公は敬虔なクリスチャンのもとに生まれるものの、自由に生きる為に家を飛び出していますからね。