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苦い涙のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

苦い涙(2022年製作の映画)
3.0
[ピーター・フォン・カントの苦い涙] 60点

2022年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。フランソワ・オゾン長編21作目。近年の縦横無尽なテーマ選びが今回も炸裂。本作品はオゾンのキャリアで二度目のファスビンダー原作の映画(一度目は『焼け石に水』)で、今回は『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』の映画化作品である。主人公はファスビンダー本人を模したペトラから、より本人に近いペーターもといピーターに変更され、それに伴って職業がファッションデザイナーから映画監督に変更されている他、恋人の名前もアミール・ベン・サレムとエル・ヘディ・ベン・サレムを想起させる名前に変更されている。ファスビンダーの内側に触れられないなら外側をファスビンダーにしちゃえ、ということである。事実、映画は脚本を辿っているだけという感じで、その裏にあるはずのエモーションをあまり感じなかったのだが、巨漢ドゥニ・メノーシェが演じることでオスカー・レーラー『異端児ファスビンダー』とかをしっかり思い出したので、変更は結構観客側の補正には有利に働いていると思うなど。それにしても、元々の『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』出演者であるハンナ・シグラの登場はアツい。前作『すべてうまくいきますように』での登場が伏線だったのか?そういや、シグラは『異端児ファスビンダー』には名前の使用許可すらださず、レーラーは当て付けのように"『マリア・ブラウンの結婚』でスターになったマルタ・ヴィチュレックよ"とか言わせてたのを思い出した。あと、ドゥニ・メノーシェってあの体躯に似合わず、簡単にやられることが多い。アミールなんかタックルしたら吹っ飛ばせるだろ!!!
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