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苦い涙のmiumiuのレビュー・感想・評価

苦い涙(2022年製作の映画)
4.2
フランソワ・オゾン監督作品。
R・W・ファスビンダー監督の『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』をリメイクした作品。
尺も短くサクッと観られそう! ということで映画館で鑑賞した。

それなりに成功し業界で地位を築いた映画監督ピーター・フォン・カントが、恋人と別れて落ち込んでいたタイミングで、俳優志望? の若き青年アミールに一目惚れ。
あっという間に恋に溺れて常軌を逸していく様子を描くコメディ。

恋に落ちてみるみるドツボにハマるピーターが哀れだけど滑稽で、めちゃくちゃ笑った🤣
映画館で他のお客さんも声出して笑ってたよ!!
恋がうまくいかず悲嘆に暮れるピーターは気の毒… なんだけど、俳優としての活動を後押しする条件で若い子に手を出すの、いくら本気の恋のつもりでもやっていることはワインスタインと同じだからね! 同性間の恋であってももちろん、それは同じ。
惚れた弱みであっという間にパワーバランスが崩れるのとか、「ざまあみろ!」という感じだった。
そして、いくら恋に夢中でも、恩義のある仕事仲間や部下、家族を蔑ろにしていい理由にはならないわけで…
ピーターがどんどん追い詰められいく様子は、特権的な地位に胡座をかいて加害的な振る舞いをする男性を糾弾しているみたいで、むしろ爽快ですらあったw

ピーターとアミール以外にも、イザベル・アジャーニ演じる大女優シドニー、ピーターの付き人カールなど、濃いキャラクター満載で楽しい。
特に登場した瞬間から「ああ、今作はコメディなんだな」と思わせてくれるカールの存在感は素晴らしい。めちゃくちゃ好きなキャラクターで、最高だった。

物語そのものが基本的にピーターの邸宅のみで進み、舞台劇っぽさがあるところ、コメディなのにいちいち拘りが感じられる映像美を味わえるところも好き。
フランソワ・オゾン監督作品、最近はサスペンスやヒューマンドラマが多かった気がするから、ド直球なコメディは新鮮だった。
毎回作風やジャンルが違うのに全て面白いの、本当にすごいな…!
新作はもちろん過去作も含め、改めてチェックしたい。
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