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関心領域のmiumiuのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
オスカーはじめ、賞レースを賑わせていて気になっていた作品。スタジオA24作品でもある。
やっと日本公開されたのでさっそく鑑賞。

1945年ドイツ、アウシュビッツ収容所の所長を務める主人公とその家族を描く映画。
タイトル『関心領域』(The Zone of Interest)のとおり、収容所に隣接した土地に住み、塀一枚隔てた先では虐殺が行われているのに、家族(特に主人公の妻)の関心が収容所には一切向いていないのが恐ろしい。
裕福で健康的で、家族仲睦まじい(ただし表面的なものだということが観ていくうちに分かる)生活を送っているのがゾワっとする…
さらに、おぞましい収容所がすぐ近くにあるのに、夫の栄転? が決まったときに妻が引っ越しを拒否して住み続けることを望むの、狂気としか思えなかった…
(妻役のザンドラ・ヒュラー、今作出演に加えて『落下の解剖学』にも主演しているの、すごい)
そして裕福で贅沢な生活の一コマに見える描写が、実はユダヤ人からの略奪の結果だとわかる演出にもゾッとした。


収容所の中の様子は映像としては描かれないが、塀の向こうから聞こえてくる音としては表現される。
悲鳴、銃声、収容所に到着する汽車の音。
オスカーで音響賞を受賞したのも納得の音の使い方で、オープニングからずっと不穏。
そして収容所の中の様子だけではなく、一般的に「観たくないもの」とされるであろうものを、徹底的に見せない演出が冴え渡っていた。

淡々と話が進むからこそ、現代のアウシュビッツ(?)と繋がる場面は犠牲者の想像を絶する多さに気づかされて胸が締め付けられた。
そして、それでも仕事の場として勤めると、慣れて何も感じなくなるのかな… と考えさせられた。
世界各国で戦争、争い、虐殺が起きても、そしてそのことを知っていても、関心を抱かない層がいる。

観ていて決して気持ちの良い作品ではないけれど、多くの人に観てほしい、まさに今観るべき作品だった。
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