こまち

午前4時にパリの夜は明けるのこまちのレビュー・感想・評価

4.1
大好きなミカエル・アース監督最新作!

離婚して悲しみに暮れる母親が、仕事に就いて様々な人と出会いながら、成長していく子供たちと共に再スタートする物語。

相変わらず登場人物たちとの程よい距離感と優しいまなざしがある。
前作、前々作は、喪失を経験した人々の愛や日常の機微を、夏の陽光と爽快感に包まれた色彩で描いていたけど、今作は題名の通り全体的に夜の闇と穏やかな照明を基調としていて、また違った印象。

日常を淡々と描写しているようで、当たり前すぎて見えないものをすくってくれるような、人生ってなるようになるものかもしれないと、肯定してくれるような優しさに溢れている。

エリザベートは最初はつい涙が出てきて悲愴な顔ばかりしていたけど、段々笑顔が増えていって、心情の変化が表情でひしひしと伝わってきた。
ラジオで働き始めて出会った孤独な少女タルラとの関係は難しいものだったかもしれない。でも、彼女はきっと何かを変えたくてラジオに応募して、運良くコーナーに出演することができた。だからこそこそ出会えた彼女を、エリザベートは放ってはおけなかったと思う。
長男が最後にタルラに伝えたことも、お互いのための愛ゆえの言葉で、タルラにとっても自分のことを気にかけてくれる人がいると思える居場所ができたということだろう。

個人的には、登場回数は比較的少ないけど、さっぱりした性格でしっかり者の長女が一番印象的だった。少し脆い母親と思春期の長男の間に入って支えていて、家族というものの妙を感じた。


ただ、一つ残念だったのは、ラブシーンがかなり強め。。。繊細な物語の中で、唐突に生々しさを突きつけられる。それも日常の一つであり一種の美であり、また文化の違いもあるとは思うけど、もう少しマイルドでも良くないか…作風的にもプラトニックラブがいいなぁと思ってしまった。

音楽や頻繁にタバコを吸ってるシーン、映画館など80年代を感じさせる文化だったり、リスナーが収録スタジオに行ってラジオに出演できたり、憧れやノスタルジーが詰まっている。


ようやく2年半ぶりに映画館に行けて、ミカエル・アース監督作品を観れて感激だった…!
こまち

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