貧しい暮らしを送るウェンディは、車が壊れ、万引きもバレて、愛犬ルーシーとも引き離され泣き面に蜂状態。
ルーシーを探し続ける日々が淡々と映されるが不思議と絶望感はない。
心優しい警備員さんとの交流、万引きを捕まえて同情の余地もねえわという勢いで正義感溢れるスーパーの店員、対して保健所職員の親切な対応とか、ウェンディに向けられる視線や温度感の違いが繊細に描かれている。
色んな人がいて居心地悪いこともたくさんあるけど、ほんの少しの期待とか、人からの思いやりとか、些細なことで日々生かされていて、なんてことないストーリーかもしれないけど「生」を実感できる。
ウェンディは社会の周縁に生きている人、と言えるけど、具体的な彼女の背景や素性は描かれないことで、まとわりつきがちな悲壮感とか憐れみみたいな視線が全く取っ払われて、鑑賞者としてフラットに彼女の心情を見つめられるようだった。