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夜がまた来るのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

夜がまた来る(1994年製作の映画)
5.0
おとり捜査のため池島組に潜入していた麻薬Gメン、土屋満の死体が横浜港に浮かんだ。殉職どころか、汚職の嫌疑をかけられ犬死にした夫の無実を信じるのは妻の名美(夏川結衣)だけ。
しかも彼女は満の葬式の日、池島組の組員たちにレイプされる。名美は絶望のあまり自殺を図るが一命を取りとめ、そして夫殺しの犯人は池島組会長である池島政信(寺田農)であると睨み、池島の命を狙おうとする。
だが別の鉄砲玉が池島に襲いかかる場面に遭遇、そこで村木哲郎(根津甚八)に出会う。
池島を殺すことに失敗した名美はまたもや自殺を図るが、村木に助けられ、池島組にかかわるのは止めろと忠告される。
しかし、村木と名美は池島組の幹部とクラブホステスとして再会する。
村木の心配をよそに池島に接近する名美は池島の情婦となっていく。
ある夜、ベッドの隣りに眠っている池島を名美は殺そうとして失敗、激怒した池島によって囚われの身になり、村木の舎弟である柴田(椎名桔平)にいたぶられる。
そこでも村木の仲介で名美は命までとられなかったものの、シャブ漬けにされ、場末のバーに売られる。すっかり変わり果て、荒んだ毎日を送る名美を助けだし、介抱してやったのはまたもや村木だった。
立ち直った名美は村木に銃の撃ち方を教えてほしいと頼む。お互いの心の傷をなめあうように、2人はいつしか愛し合うようになっていった。
そしてある日、池島組に警察のガサ入れが入った。村木に誘導され、屋上に逃げた池島の前に拳銃を持った名美が現れる。
夫を殺した犯人の名を問う名美が油断した隙に銃を奪い、名美を追い詰める池島。その時、池島に向けられた村木の銃が火を吹いた。
さらに組長を助けようとやって来た柴田と村木は壮絶な死闘を繰り広げるが、村木は何とか柴田を倒す。
だが、その村木が持っていた銃が夫のものであったことから、名美は村木こそ夫を殺した男であることを知る。
村木もまた、満よりずっと前から池島組に潜入していた刑事であり、自分の身を守るためやむを得ず満を殺したのだった。
真相を知った名美は泣き叫びながら、近づいてくる村木を撃ってしまう。斃れた村木を抱きしめる名美。そして夜が明けようとしていた。
「愛するもののために、女は自らを地獄に堕とした。」麻薬Gメンの夫の復讐のために、夫の復讐の機会をうかがいヤクザに犯され覚醒剤に溺れながらも、自ら身を落としていく女・名美。そんな名美を救おうとするヤクザの幹部・村木。鬼才・石井隆が官能的に描く男と女のネオ・ノワール。 『死んでもいい』『ヌードの夜』に続いて石井隆監督が放った男と女のネオ・ノワール。
ヒロイン“名美”役に夏川結衣。女優として飛躍のきっかけとなった。村木役には石井作品に欠かせない根津甚八。全篇が〈夜〉という石井隆監督のこだわりの世界を官能的な映像でフィルムに捉えた笠松則通の撮影と、カスタネットを使った安川午朗の民族音楽を思わせる音楽も暗い情熱をかきたてる。 
夏川結衣が演じる名美は、一途に麻薬潜入捜査官の夫を案じ愛し抜いているが故に、夫の復讐のために地獄をくぐり抜けつつも、より美しく強くなっていく女性を熱演しています。根津甚八さんが演じる村木も、ある理由から名美に対する贖罪と愛から危ない橋を渡って助ける一途で不器用な男を演じています。デビュー直後の椎名桔平も、ギラギラした執念深い悪役を演じていて、全編に渡ってほとんど雨が降りしきる中、終わりのない夜で儚い愛のために地獄巡りする男女を描き切った日本製のフィルムノワールの傑作です。
ラブストーリーとしても、ヤク中になった夏川結衣を必死に看病して世話する中で惹かれ合っていく村木と名美の美しい愛が、儚く美しいです。
特に、ラストの根津甚八と椎名桔平の凄絶な死闘は、息をのむ迫力の名場面です。
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