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PLAN 75のtomomi30のネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

『あなたはどう思う?』とこの映画に投げられた問いを、誰かと議論したい。

公開記念舞台挨拶にて。
サプライズで監督から、今月29日にお誕生日を迎える倍賞千恵子さんに花束のプレゼントが💐
81歳になられるそうで、長生きして、まだまだその演技を見せていただきたいと思いました。


『75歳から自らの生死を選択できる』なんて、とんでもない制度ができた日本。

現実的にそんな制度ができるなんて有り得ないんだけど、実際死にたいと思う高齢者は一定数いて、若者に迷惑をかけることを申し訳なく思う人や、自分の未来に絶望する人、死ぬその時は自分で選びたいという人はいるのは確か。


親しみやすいキャッチーなロゴに、PLAN75を選んで良かったと清々しく笑顔で話をする高齢者の出るCM。

『高齢者に死を勧めるサービス』を仕事とする人は、良い人生のプランだと、丁寧に、確実に対象者を誘導する。
PLAN75を決めた人へのサービスも手厚く、やっぱり辞めたなんてことにならないよう、その日が来るまでサポートする。

本当にこんな制度ができたら、日本という国はこんな風に、とっても良いものですよと国民にアプローチしていくんだろうな。
生活に困窮した人が集まる炊き出しをしている場所に、PLAN75のブースを設置するのも、効率よくその対象者が来るのを誘導する、人の心の操作に怖くて震えた。


75歳を越えて、年齢が原因で仕事を辞めざるを得なくなり、働きたいのに再就職など難しく、家を借りることもできず、同世代の友人は突然孤独死する。
この制度が日本にできてないだけで、すごくリアルな日本の今が描かれていたよ…
とても現実に近いフィクション。
ミチが、未来の自分ではないかと思うと、ふらっと静かに自らの命を終える選択をしてしまうかもしれないと感じている。


『こんなに良いものですよ』と、仕事としてその制度を対象者に勧めてきたヒロム(磯村勇斗)が、実際にその制度を身内が利用するとなった時に、1人の人間として心が揺れ動く姿が、人らしくてとても良かった。
死を選んだ叔父を、自分の手でしっかり弔おうと必死になる姿には涙が出た。


最後のシーンは、台本だと風が強く吹き、それに向かってミチが進んでいくというシーンだったそうで。
しかし、私はこのとても静かなラストシーンが大正解だったと、心から思います。
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