金春ハリネズミ

PLAN 75の金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.5
現代の日本に真っすぐストレートな一本。
切れ味があって、それでいて純粋繊細な白球です。

全体的な結論としては、やっぱそんな単純な話じゃないってこと。
身の回りに散乱した種の結晶を一掃したところで、結晶はまた作られていくしそれでは抜本的解決は見えてきません。

僕はというと、20代前半。
ケツに毛が生えたくらいのまだまだシャバい若蔵です。

昨今度々、まるで「敵」かのように取り扱われる高齢者の像。
僕からすると、まだまだ実感の湧かない存在で。
僕らと彼らの量的な格差が、日本の悩みの種になっていることはわかっているつもりです。

浅野いにおの短編にも本作のように問いかけている読切があったように記憶します。
※追記※
藤子・F・不二雄にも老後を扱ったSFがあるそうな。

現役世代にとって、老人は邪魔者なんでしょうか。

近い友人の中には、殺してしまえばいい。
と、かなり過激な思想を持った若者もいます。
タチが悪いのは、「自分にその時がきたら潔く死ぬ。仕方がない。」とか、「おじいちゃんおばあちゃんはまだ生きていて、それは残酷だしめちゃくちゃ悲しいのはわかってる。」とかとか。
人間の心を持ったうえでそうすべきだ。
なんて補足を付け加えてくれる人も。
それは人間の心とは言わないと僕は思うんですが。。

けど僕はね。
この意見に対して、はっきり心の底からNOを出せないんですよ。
賛成は勿論できないけど、じゃあ仮に断固反対としたところで、「じゃあどうするの?」の問いに対しては胸が痒くなる。

だからほんと難しいなっていっつも同じ末路でこの話題に折り合いをつけてきました。

本作を観てると、僕とは違う立場の人々も、形は違えどどこか同じところで悩み苦しんでいることが肌感覚で伝わります。
彼らも血の通った人間だし、僕ら若年層よりも実態は深刻でやるせない。
なんだか自分も追いやられているような気がして、辛いったらないんす。

けどね、プラン75を拡充させたって、やっぱり問題は失くなりませんよ。
だから意味ないんです。
老人を殺せ。なんておとぎ話語ったって。


どうしようかなってずっと悩みます。

ミチさんを観てると勇気付いてくるんです。
それでいて、心の底から応援したくなります。
現実はすっかり残酷でカオスなんだけど、「生きてやるぞ」って気持ちは間違いないと思うんす。

観客はほとんど高齢の方でした。
この映画は、きっと胸を強く打つ気付け薬になってくれてるような気がします。
僕が老人になったら、こんな映画本当にありがたいと思う。
まだまだ青いけど、なんか僕も勇気もらった気持ち。
若い人にも刺さるといいなって。

生きたいです。
まだまだやりたい事があるんです。
そう言う人を、居なくなればいいなんて思うことはできません。

改めて向き合ってみたいですね。
排他的でなく人間的に。
どうやったら手を取り合えるかを考えたいですね。