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暖流のILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

暖流(1957年製作の映画)
3.8
原題『暖流』 (1957)

監督 : 増村保造
脚本 : 白坂依志夫
撮影 : 村井博
編集 : 中静達治
音楽 : 塚原哲夫
出演 : 根上淳、左幸子、野添ひとみ、他

岸田国士の同名小説を原作とした、破綻目前の病院の経営再建を任された男が、病院乗っ取りを企む院内勢力や浪費家の院長の息子らと闘う姿を、病院令嬢と看護婦との三角関係に絡めて描く文芸ロマンス映画。

原作未読。

「人並み以上に感情を押し殺す女」と「人並みに感情を制御する男」と「人並み以上に感情を表現する女」の三角関係に、狂った結婚観の医者や絵に描いたような放蕩息子や女のバイタリティーが強調された戦後の新しい女性像を組み入れ、ドロドロした陰湿な物語になりそうな所を独特の作風で描かれている作品。

まぁ、なんといっても左幸子の熱演が素晴らしい作品で、好きな男のためなら何でも嬉嬉として行動して逞しい姿は圧巻。

前半のわがままな令嬢と没落後の自立した女性との対比も見事だった野添ひとみも良かったし、船越英二のバカな放蕩息子ぶりのコメディ感も良かったです。

個人的には、白いシーツが干されている中を俯瞰ショットで移動していく長回しシーン、その後の高低差が印象的な病院の塀を隔てて左幸子が全身を使い、啓子に「愛は、すれっからしになることよ」と言い放つシーン、ブランコのシーン、突然、左幸子が猛スピードで現れて東京駅の改札で「妾でも2号でもいいから、待ってる」と叫ぶシーンなどの演出は面白かったですし、「映画」を感じました。
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