リュシーが遂行した復讐の元凶を、身をもって体験するアンナ。前半と後半で2人それぞれが主役となり異なる憤怒と狂気を魅せているのが大変素晴らしい。
暇と思考を持て余した金持ちの気違い実験の餌食という、テーマとしてはありふれた題材。しかし、徹底的なまでの悪辣さと残酷さを極めた映像が凡作の範疇からの逸脱を嗾けており、もはや芯の通ったある種の高貴ささえをも感じ取れる。描写されるのは肉体に対する暴力性なのだが、ひしひしと伝わってくるのはひたすらに精神に対するダメージ。彼女達に血は流れているが、そこから伝わるのは肉体に対する傷みや痛さではなく、それを超越する精神的傷みと痛み。
極限状態を超えた先に見るものとは?果たしてニルヴァーナという境地は存在しうるのか?殉教という課された死の元で見る景色とは?
一貫してぶちまけられる暴力にプラスし、この独善ともいえるような理想と自惚れの渇望をそれを欲しない無辜な他者に委ねるという事に最高の嫌悪感を抱く。あらゆる側面で不快さにぬかりのない本作品、久々に突き刺さるものを得た。
