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ドント・ウォーリー・ダーリンのsomaddesignのレビュー・感想・評価

4.0
郊外の住宅街で愛する夫ジャックと幸せな日々を送るアリス。専業主婦として炊事・洗濯・掃除をこなしつつ、ママ友とショッピングやバレエ教室を楽しむ、裕福で幸せな生活を送っていた。だが、精神疾患とされるママ友の言葉に。次第に精神が不安定となり周囲からも心配されるアリスだったが、あることをきっかけに、この街に疑問を抱くようになる。

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監督デビュー作「ブックスマート」でガールズ青春映画の新風を起こしたオリヴィア・ワイルドの最新作。世界観がググッと変わって、女性の生きにくさを50年代アメリカな世界を舞台に暴く。古き良きアメリカの幻想に隠された暗い側面を暴く映画でもある。

一見すると見えない壁やガラスの天井に阻まれる女性の生きづらさを描いてるけど、反転して男性の男性らしさの生きづらさも浮上して見えた。特に女性に縁のない男性の悲哀っちゅーか、「男らしさ」を体現し続けないといけない苦しみっちゅーか。(今作だと男性一般じゃなくインセル(INCEL)に限定して、暗く陰謀論にハマりやすい未熟な成人男性って描いてるので、一般化するのは違う気もする)SEXシーンは多いけど、男性が満足するシーンが一度もないのが印象深い。

繰り返される円やシンメトリーのイメージ。円環や対称性の暗喩じゃなくて、完璧に統制された世界の閉塞性を表して見えた。意味はわかった気がするけど、何度も同じ映像を見せられるので「それはいいから、その先を見せんかい」って気持ち。

全体を振り返って俯瞰して見れば、だからアリスの親友がバニーなのか。
これは「不思議の国のアリス」でもあるのか。


余談)
映画公開と前後して、今作を中心とした一悶着も作品と合わせて記憶したい。
きっかけは主演のフローレンス・ピューのSNS。彼女は主演にも関わらず、今作への言及をほとんどしてこなかった。(公開1ヶ月ほど前に公開日を知らせるインスタを上げたのみ)
今作の制作をきっかけに熱愛が発覚したオリヴィア・ワイルド監督の新恋人ハリー・スタイルズ。当初ジャック役だったシャイア・ラブーフに不快な思いをさせられたとの報道も。(シャイア・ラブーフは制作初期に降板。監督によれば解雇、シャイアによれば辞めたとも)
監督とフローレンス・ピューの不仲説も囁かれ、今作への温度差が感じられる。
22年4月、シネマコンで今作のプロモーション中、壇上の監督に元パートナーのジェイソン・サダイキスから2人の子供に関する親権書類が配達されるハプニングが起きた。20年秋に破局した二人だったが、それ以前からハリー・スタイルズとの交際が始まっていたのではないかとジェイソン・サダイキスは考えている模様。オリヴィアが去った後、彼女が忘れたApple Watchを発見。ハリーとの馴れ初めを知ってしまったとか。……映画以上のドロドロの場外乱闘を知ってから今作を見直すと、また違った味わいがしてきそう。監督自身も出演してるしね。


70本目
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