自己愛の世界に耽溺した人間同士が交わる筈もなく平行線を辿るだけでなく時には激しい衝突を巻き起こすなんてのは世の歩きスマホ馬鹿を見ていれば何よりも一目瞭然だろうがそれを家族に落とし込むのもそこの父性が欠如しているのもジェシー・アイゼンバーグらしさを感じるし、ここで既に「本当の痛み」なんて言う次作に通ずる台詞も出てくるくらいだから、この人は今後も一貫した映画を撮りそうな気がする。息子はネットの世界に沈み込み母はそんな「理想の息子」を失ったが為に代替存在にはた迷惑な母性を注ぎ込もうとする。確かに他者との交わりを「愛」をもって為すのは正しいのだろうが、息子にしたってそこにあるのは明らかな自己愛と自己顕示欲(ないし少しばかりの性欲)であって他者に対する愛では結局無い。「交わるまで」だから本当にそのタイミングで、この先は各々が自分の頭を働かせて正しく他者を認識すべきところだし、この映画が果たすべき役割は充分に果たしながら丁度いい尺で映画は終わる。初監督作ながら随分な小慣れ感を滲ませる良品だと思う。