ふじこ

ザ・ホエールのふじこのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

これはなんて言って良いのか…難しい映画だったなあ。
なんと言ってもキリスト教的な価値観を知らないし、その分派?ともなると全く知らない。終末思想っぽいけど。
更に言えば[ 白鯨 ]の事もこれっぱかしも知らない。白いクジラ~!宿敵なんすよ… みたいなイメージしかない。なんか足を取られたらしいけど…クジラって足食うんかな。

みんなそれぞれが厚い依存心があって、それに気付いていたり気付かなかったり。
例えばリズはチャーリーの事を"わたしだけが救える!"と言っていたけれど、実際はそうじゃなかった。
チャーリーを救うのはただ一人、彼女を生み出した事が唯一"この世で正しい事をした"と思える、自分の娘だけ。
彼女もまた救えなかった兄のアランをチャーリーに見出し、彼を救う事で自分が救われたかったんじゃないだろうか。

チャーリーがアランという同性の男に恋をした事で妻と娘を捨ててしまった時の考えや気持ちは分からないんだけど、アランのチャーリーを愛しているという気持ちと神への信仰心の間で板挟みになって結果自死してしまった事への自責の念や辛さなんかは分かる。
その事で暴飲暴食に走った結果、死が見えるまで太る羽目になってしまった事も分からなくはない。
でもそこから娘にお金を残すために治療を選ばず、死を前にして8年前に捨てた娘に救いを求めるのは…結果的に娘にも変化があったのだから、とは思いつつも…正しい親の姿ではないよなぁって。
正しさを語るならそもそも捨てて出て行って、妻に娘を押し付けてそのままだった時点でどうしようもないんだけども。結局自分の死を前にして、自己満足のために娘を利用したような形でもあるんじゃないかなあ。
妻は妻で、娘が扱い辛く真っ当に育っていない事を夫に知られたくなくて(捨てられた側の意地みたいなものかな)娘にはなんの問題もない、と突き放していたのだろうし、チャーリーは引け目から深い関わりを持とうと行動する事が出来なかったんだろうけども。
親と言っても完璧な人間じゃないのは分かるけれど、全部のしわ寄せが娘に行ってしまっているのが可哀想だなと思っていた。
この映画で一番真っ当に苦しんで悲しんで、正しい姿で藻掻いていたのは一番年若い娘だったんじゃないかなあ。

なんて暗い映画なんだ、と思いながら観ていた。
娘はこれからどんな風に変わっていくんだろうなぁ…。8年ぶりに接触してきた父親は激太りしていて一週間で亡くなっちゃった訳だけど…。母親がもうちょい説明してくれたら良いねぇ。


それにしても、ブレンダン・フレイザーって演技お上手だったのね…。[ ハムナプトラ ]でしか彼を意識した事がないし、あの映画はわたしには全く嵌らなかったからなんとも思っていなかったけれど、素晴らしかったわ。ごめんねフレイザー。

若く、犯した罪から逃げ出していた宣教師には自分を踏み台にさせる事で正しい道へと戻そうと思ったんだろうか。
彼の語る神には中身がないように思えたし、誰かを救う事に見出す何かよりも、まずは自分を救うべきなんじゃないかと思った。
ピザ屋さんのシーンが悲しい。
ふじこ

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