ましか

ザ・ホエールのましかのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

どの考察サイト見ても何か違う感じがしたのでこちらで供養させてください。

白鯨、批評(エッセイ)、受容がテーマだった本作において、最も力を持つ象徴は神。

『白鯨』の中でも、エイハブに加え船上員は白鯨に恐怖し、それに打ち勝つことに魅了される。チャーリーの巨大な体躯とそれに対する恐怖から、本作のチャーリーが白鯨だとする考察が多いのだが、むしろチャーリーはエイハブとしての立ち位置にあると考えられる。
なぜなら、『白鯨』の中でのエイハブは、白鯨という神に逆らったから最期を迎えることになり、彼は白鯨を討てなかったものの長年見つけられなかった白鯨にあえた喜びは強かっただろう。本作のチャーリーの最期と似ている。

では、チャーリーが追い求めた白鯨はなんなのか。それは、自身が傷をつけた仲にある人物からの愛だと考えられる。
本作で最も重要なタームとして、「扉の前でチャーリーが引き止めるのを待つ」というものがある。これを行っているのが、元妻と娘である。しかし、チャーリーは神(現代における医療)に逆らい引き止めることが出来ない。これは、『白鯨』における、エイハブが白鯨と出会うチャンスと言っていいだろう。

このように失ってきた神との再会は、最後に娘の音読を聴くこと(親子のキャッチボールのようなもの)によって迎えられ、彼が最期に見たかった「愛ある場」を見ることが出来た。
そして、彼の最も幸せだった時間を見ていた娘こそが、『白鯨』の中で生き残るイシュメールだと考えられる。

チャーリーを恐れるということは、この作品で出てくるチャーリーに蔑視を向けるキャラクターと同様なものであり、そのような人にとっては彼が白鯨になってしまうのだと思う。
ましか

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