あまんだ

ハッチング―孵化―のあまんだのレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
4.3
一見、幸せそうに見えながら、その実、自身の幸せな家族の様子を流す、動画配信に命を懸けてる、毒母に支配された家族関係の中で、森で拾った卵から孵った、気っ色の悪い鳥?のようなものを育てる事により、精神のバランスを保つ主人公の少女ティンヤ。
ところが、その鳥?が、大きくなるにつけ、どんどん周囲に害をもたらすようになり…。

卵から孵った妙な生き物の気持ちの悪さが最高。何かぬめっとして、ドロッとした臭そうな涎を垂らしており、いちいち臭いを感じさせる描写が多く、キモい上に臭い事を感じさせる。
結局、あの臭くてキモいヤツは、育っていくに連れ、ああ、そうかそうか、こいつはティンヤが、母に押さえ込まれている、彼女本来の反抗心であったり、嫉妬心であったりの負の感情の化身であるのだなとわかるような変化を遂げていくのだが、ティンヤを鬱屈させる原因の母の毒っぷりが、最高。
服とか家のインテリアが、いちいち少女趣味と言うか、乙女チックで、お花柄の壁とか、ヒラヒラの袖のワンピースとか、「可愛い、可憐」を全面に押し出しているにも関わらず、本人は猛毒で、強烈なコントラストを醸し出している。兄弟間差別はするし、娘の気持ち、人間性は一切無視して、自分を輝かせる小道具扱いするし、それをそうとはわからないような、優しい振りで、真綿で首を締め付けるように娘を侵食していっている。
表情の基本が、ずっと張り付いたような笑顔なのだが、演じているあの俳優の方、最高やな。
一見美人なのに、何か嫌な感じの女っていうのを滲み出させている。
父親は空気で、地味な男性なのだが、妻に頭が上がらず、妻の不貞を知っても、そんなママが好きだ。とか、狂った事を娘に言い放ち、ティンヤを追い詰める事に加担している。
まあ、トロフィーワイフとして妻を見ているので、何してようが、興味はないのだろう。
母の不倫相手の男性が、まともな感覚を持っており(不倫してるけどな)、ティンヤに普通の感覚のアドバイスをしたりして、一瞬希望が見えるものの、普通の人故、ヤベェ母娘だと、すぐに察知して、二人をシャットアウト。悲しくも、ティンヤは、すぐに狂った世界に戻される。
それに端を発してのラストなのだが、あれは、やっぱティンヤの成長と取るべきなのだろうか。劇中の彼女の悲惨さで、そうであることを願ってやまない。
あまんだ

あまんだ