MasahideYoshida

はい、泳げませんのMasahideYoshidaのレビュー・感想・評価

はい、泳げません(2022年製作の映画)
3.3
2022年公開
監督 : 渡辺謙作
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泳げない中年哲学者が、ある思いをもってカナヅチを克服すべくスイミングスクールに通い出すお話。

つらい過去から目を背けるのではなく、その中にまずは飛び込んでいく勇気とその先に見える風景の物語。主人公が泳げないことには、あと乗せ的に意味がのしかかってきているわけだけど、それと戦おうとしていると勝てず、脱力をした時に未来が見えるというのが、真理として描かれている。「顔に水は付けられますが、水に顔は付けられません。量が違います。」と、哲学者っぽくややこしい言い訳を当初はしていた主人公も、変わっていくのだけど、案外そこで言っているロジックも深い気もしていて。「水を受け入れる」のではなく、「水に受け入れられる」感覚は、まさに、出来事をコントロールしようとすることを手放し、出来事に身を委ねる感覚なのかもしれない。

タイトルと佇まいに騙された、思いの外、重たい背景を帯びた映画。まあ、だからこそ、この佇まいにすることをメッセージにしたかったようにも思います。気軽に見れます。