Masato

グッド・ナースのMasatoのレビュー・感想・評価

グッド・ナース(2022年製作の映画)
4.0

ジェシカ・チャステインとエディ・レッドメインの実力派コンビによる多数の被害者数を出した実際の医療殺人を描いたサスペンスドラマ。

内容よりも二人の演技合戦に目が行く映画。オスカー俳優なだけにどちらも鬼気迫る演技で圧巻。二人とも感情を押し殺すような抑えた演技で今にも嗚咽しそうなくらいの場面でもギリギリのところまでで踏ん張る感じが胸を張り裂けさせる。特にエディは終盤の演技が恐ろしいくらいに凄い。この二人のおかげで映像的な演出無しでもスリリングにもドラマチックにもなれる力強さが半端なくて見応えある作品にしている。

トマス・ヴィンターベア作品の脚本をしているトビアス・リンホルムなだけに決して晴れやかになれる物語ではないとは想像していたが、思っていた通りにドスンと心を重くする作品だった。全体的に青みがかった寒色でカラーコーディネートされていることでホラー映画と見紛うくらいに不気味でどことなく鬱屈した雰囲気なのが良い。

日本でも看護師が気づかれないように患者を殺す事件はあったし、万国共通なのか。アメリカにおけるこの事件では病院側の過失がかなり多かったことに注目されていた。仮にこのような事件が起きたらイメージガタ落ちで廃院は免れないから、隠蔽は民間病院である以上避けては通れない問題であると思う。アメリカではこの事件で法整備が進められたのことだが、日本でも同様の法整備が必要だと思う。

命を扱う以上、政府による医療への積極的な干渉は大いに必要だと思う。これは病院だけでなく、水道や郵便などのインフラは民営化したほうが国民にとってデメリットが大きいのは日本人なら痛感していると思う。アメリカでは小さな政府として緊縮財政を行ったせいで医療格差が半端ないと思う。この苦しさが主人公の心筋症なのに経済状況が良くなくてまともに治療できないところに現れていると思う。

監督はデンマーク人なので、そうしたアメリカの行き過ぎた資本主義的、もとい反共産的な成り立ちの社会構造を異質なものとして捉えているのかもしれない。お金に余裕がなければ心も余裕がなくなるのは企業も人間も一緒。余裕のなさが生んだ隠蔽と非干渉の大量殺人。
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