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オリエント急行殺人事件のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

オリエント急行殺人事件(1974年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

大陸横断国際列車オリエント急行には様々な乗客が乗っていたが、その中には名探偵エルキュール・ポワロの姿もあった。二日目の深夜、折りからの雪で線路が埋まり列車が立往生している中、ポワロの隣の客室にいたアメリカ人富豪ラチェットが身体中を刃物で刺されて死んでいるのが発見される…。

ミステリーの女王アガサ・クリスティーの傑作を豪華キャストで映画化。
原作は、驚愕の真相と犯行のトリックが賛否を呼ぶ有名な名作。
役者の演技、撮影の美しさと細やかで繊細な演出、時代考証の効いた豪華な美術にファッション。
個人的には名探偵ポアロが登場する映画化作品では最高傑作だと思っている。

「灰色の脳細胞」を誇る名探偵エルキュール・ポアロ。
常に身なりに気を遣い、紳士然とした態度を崩さず、神経質だが明晰な頭脳を持つポアロを、アルバート・フィニーが丁寧に愛嬌たっぷりに演じている。
フィニーはこのたった一作しかポアロを演じていないのが意外だが、個人的には最高のポアロ演者。
初めて見たポアロというせいもあるが、食事の好みや、髭や髪もマスクを付けて寝るほど身だしなみに徹底的に「こだわる」キャラクターのインパクトが強かっただけに、ポアロというと、いまだに彼の姿を思い浮かべる。
あの些細な「こだわり」が手がかりを見逃さないのだ。

鉄道会社からの依頼で事件の究明に乗り出したポワロは、一等寝台の車掌と十二人の乗客たちの尋問を開始する。
イングリッド・バーグマンをはじめとした当時屈指の豪華キャストが揃えられ、名優たちが織り成すなりきり演技もまた見事。
どの人物もキャラクターが立っていて、我先にと目立とうとしないのが非常に奥ゆかしい。

ポアロがそれぞれの証言から推理し、真相を導き出す過程がスリリング。
一見、全員の筋が通っているように思えて、その実あまりにも整い過ぎている。
まるで皆が皆を庇うかのようにアリバイが成立していく。
その不自然なほど完璧なアリバイが事件解決の糸口となるのが、アガサ・クリスティの見事な着想と言わざるを得ない。

あまりにも奇抜な犯行の真相は、人によっては賛否が分かれるだろう。
容疑者全員がラチェットに怨みを持った人間であり、全員が刺して殺したのだ。
そんな都合の良いことがあるものか?と。

だが、豪華キャストによる深みのある人間ドラマと、ただの推理物で終わらない隠れた悲劇の物語は、何度見ても格調高い。
長編小説を一気に読み終えた時と同じ満足感が得られる傑作だ。
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