theocats

破戒のtheocatsのレビュー・感想・評価

破戒(2022年製作の映画)
3.1
原作は島崎藤村とのこと。恥ずかしながら全く読んだことはないのですが、この「破戒」は部落差別を描いた物語。
映画という形ではあるけれど、その内容に触れさせてもらったことに深く感謝します。

さて、映画に関しては恐らく必要な要素はまんべんなく盛り込まれていると推察されるし、あらまし的に内容は良く伝わってきました。
ただ、以前見た部落差別映画で感じたような激しい感情の起伏や(差別者に対する傲然と燃え上がるような怒り憎しみ、非差別者に対する言いようのない深い悔しさや悲しみの投影など)、それゆえにもたらされるカタルシスは本作では生じることはありませんでした。

部落差別をする人間の醜い意地汚さ、あさましさはもっとどぎつく描いても良かったような気がするし、全体的にソフトなオブラートで包み込んだような食い足りなさは否めませんでした。
しかし、それは現代という時代に適合させるための致し方ない演出であったかもしれず、そこらへんは作り手側も妥協せねばならなかった様々な事情もあるやもしれません。

というわけで映画的な出来という点に関しては満足というわけにはいきませんでしたが、それでも令和という現代において本作の「部落差別」というテーマで映画が作られ上映された意義の大きさは損なわれることはないでしょう。
どうもありがとうございました。
theocats

theocats