2022年の韓国映画。主演は『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク。
韓国を代表する名優であるチェ・ミンシク。彼の出演作というだけで必然的に期待値が上がる。彼の演技は期待通りの素晴らしさであり、作品全体の出来としては期待以上のものであった。
チェ・ミンシクが演じるのは脱北者の天才数学者。訳があって学校の夜間警備員として働いており、そんな人が実は凄い能力の持ち主という設定がマット・デイモン主演の『グッド・ウィル・ハンティング』と重なる。もちろん中身は別物だが、ロビン・ウィリアムズとマット・デイモンの役柄を入れ替えた設定とも感じて面白い。主人公の元数学者と落ちこぼれの生徒が、数学を通じて友情を深める話で感動的。韓国は日本よりも競争社会であるが、数学を学ぶことのそもそもの在り方を説いている点に感銘を受ける。この部分だけでも十分の面白さであるが、主人公の脱北者という設定を使って南北問題へと昇華させてある点も見事だ。北も南も悪い部分は改めなければならないと、観る側の良心に訴えかけるメッセージ性が素晴らしい。心が洗われる素敵な作品だ。
チェ・ミンシク相手に堂々とした演技を披露する、生徒役のキム・ドンフィに要注目。本作にはオーディションで選ばれたのだとか。チェ・ミンシクの演技に呼応しての熱演は、役柄をそのまま反映させたかのような師弟関係を思わせ微笑ましい。教師役のパク・ビョンウン、主人公の友人役のパク・ヘジュンなど、脇を固める役者の渋みも光る。女子学生役のチョ・ユンソも好演だった。
学ぶことや、そもそもの探求心から得られる大切なことに気付かせてくれる話。こういうことを教え、導く人が本当は必要なんだ。ピアノ演奏も印象的で、とっても素敵な物語。良作であった。