このレビューはネタバレを含みます
イジメっ子が拉致される瞬間を目撃してしまう女性の話。
主人公は太った体型を理由にイジメを受けており、所謂『キャリー』的なリベンジホラーになるのかと思いきや、意外な方向に話が転がっていきます。
イジメっ子が殺人鬼に拉致される瞬間を目撃してしまう事で、「通報するか?」「黙っておくか?」という葛藤に苛まれていくわけですね。
普通の映画の主人公だったら正義感を発揮して、通報するなり、自分で犯人を捕まえたりするのでしょうが、本作の主人公はイジメの被害者であり、拉致されたのはイジメの加害者。
イジメの描写が結構ハードだった事もあって、見殺しにする事で復讐を果たそうとする主人公の気持ちも分からなくもありませんでした。
そして、更に本作が変わっているのが、主人公が殺人鬼に恋をしてしまうのです。
これまた意外な展開ではありましたが、殺人鬼に恋してしまうほど主人公は孤独であり、欲求不満でもあったという事でしょうか。
女性の性欲もきちんと描く辺りは、女性監督ならではの視点かもしれませんね。
最終的に、主人公は殺人鬼に反旗を翻し、イジメっ子達も助けるわけですが、殺人鬼は主人公のオルターエゴ的な存在だったのかなと思いました。
主人公の中にあった、暗くて恐ろしい願望…それを具現化した存在が殺人鬼だったのでしょう。
暴力や復讐は快楽的で、それこそエクスタシーを感じさせるかもしれないけど、殺人鬼を倒す事で、主人公は自分の中にあった弱さや悪しき心を断ち切れたんじゃないかな。
本作の主人公は、弱いし、ズルいし、情けないしで、とても主人公らしい主人公ではありません。
でも、それが普通の人間だと思うし、そうした人間らしい肉付けが、主人公をより複雑で魅力的なキャラクターにしてくれたのではないでしょうか。
どこか寓話性を感じる趣もあるし、これは刺さる人には刺さる…カルト的な作品になるのかも。
スペイン産の女性監督によるホラー映画という事で、とにかく変わった映画が見たい人にはオススメの作品です。