Yuuka

アイ・アム まきもとのYuukaのネタバレレビュー・内容・結末

アイ・アム まきもと(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「おみおくりの作法」のリメイク版だとは知らずに鑑賞。
観てる途中で「あれ?なんかこの映画のストーリー知ってる…?」となって調べたらリメイクだったと。
だがしかし、「おみおくりの作法」は喪失感がありつつも他者の人生に敬意を払い続けた主人公の生き方に対する繊細な感動があったけれどもこちらはどうにも後味が悪い。。

同じストーリーをなぞっているはずなのになんでだろうと考えてみると、主人公のキャラクターの違いだと感じた。
「おみおくりの作法」の主人公は心優しいけれども生真面目すぎて周りから浮いてしまうようなズレてしまうような人物像だったように記憶しているんだけど、こちらの主人公「まきもと」は明らかに自閉症スペクトラムの症状があるために(いつも通る道が工事していることに驚いて通れなくなってしまうような描写からもそう感じる)まわりから浮いてしまったり上手くコミュニケーションがとれなかったりしている。
そういう主人公の性質を単に「風変わり」と表現し、最終的に迎えるラストに何となく心地悪さを感じてしまった。なぜなら主人公が幸せに旅立ったとは思えなかったからだ。

最後の仕事はやり切った。周りの人間に影響を与えた。心惹かれる女性ができた。自分も少し変わった。
リメイクだから仕方ないのかもしれないけど、これからっていう段階で死んで終わりっていうのはなんだか納得がいかないのだ。ストーリーをなぞるのであれば、主人公のキャラクターも同じようにして欲しかった。
「おみおくりの作法」の主人公はタイトル通り自分の仕事である「おみおくり」に対して自分なりの「作法」を持って行動している。
だからラストも今まで送ってきた故人達に「作法」をもってして迎えられる。
だけど「まきもと」は何だか寂しいのである。何だか悲しいのである。
一生懸命やってきた主人公の行動が「作法」であるという誠実な面が見えず、ただその性質のみが露呈するような形で「風変わり」に見え、故人に「執着」する性質のみが浮き彫りにされているように見えてしかたなかった。そして仕事を失い、希望が見えた瞬間に死ぬ。主人公に対する愛や敬いの見えないラストだった。
Yuuka

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