こつぶライダー

イル・ポスティーノのこつぶライダーのレビュー・感想・評価

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
4.5
令和の時代に観て欲しい名画。
1950年代とは、どんな時代だったのか?
教科書の数行、資料集の何ページか、それでは語れないドラマや社会があるのを若者は気づいているか。
SNSはおろか、Eメールや電話もない時代、人々のツールは手紙だった。
イタリアの田舎の島にチリから国外逃亡してきた実在の詩人パブロ・ネルーダ。彼の元へ手紙を運ぶ仕事についた郵便配達員の青年マリオ。彼らの交流と、時代のうねりを感じ、若者は何を思うか?

私がこの作品に出会ったのは10数年前のこと。
イタリア映画の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』に感銘を受けた私は、それから3年後に大学へ入学。待っていたのは、日々TSUTAYAに自転車で通い、10枚近くDVDをレンタルしては観て、その繰り返し。
そこで出逢った『イル・ポスティーノ』
フィリップ・ノアレ出演の感動作と知り、急いで帰路についてワクワクしながらPCで観た記憶がある。

資本主義と社会主義で揺れる時代における詩人の立ち位置とは。
島の人々の息遣いが聞こえてくる生活のリアルさ。
島の自然や直面している問題。
様々な要素を詰め込みつつ、やはり主軸はパブロとマリオの友情。
人が絵に書いた友情ではなく、師と弟子のような関係でありながら、確かにそこにあった紛れもない純朴な人間愛。

素朴な作品であるがゆえ、その作品の魅力が全面に押し出されてはこない渋さも好き。

あのラストの展開は、イタリア人好みなのか。哀愁漂う中、パブロの詩でFin.
映画に哀しきドラマを付け加えたマッシオの死は、この作品が時代を超えてなお色褪せない名画として残り続けていることで意味があったんだと、素人ながら感じています。

個人的に、イタリア映画では『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』に次いで好きな作品です。

最後に、

今は海を離れた遠い国々の人と簡単に連絡が取れる時代である。
この作品では、1通の手紙でさえ、かなりの時間をかけて送られてくる。
こちらがいくら手紙を送ろうと、相手から返事が来るのは数週間先。
しかも、パブロのような世界的著名な人物となれば、いくら友人であろうと…

しかしながら、どんなに時間がかかろうと、彼らが築いた友情は色褪せない。
マリオがパブロからの返事を待ち続け、遂には会えなかったが、受け継いだ詩について、それを作品としてパブロに送った感動は、今の若者に伝わるのか。
そんなことを考えさせられました。
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