ストレンジラヴ

イル・ポスティーノのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
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「我が親友にして同志マリオに。詩人パブロ・ネルーダ」

1948年、後にノーベル文学賞を受賞することになるチリの詩人パブロ・ネルーダは共産党員であったことから国外追放処分を受け、イタリア・カプリ島で亡命生活を送ることになった。本作はこの史実に題材をとっている。
この島に住む内気な青年マリオは、読み書きができたことから島で郵便配達の仕事に就く。任された仕事は、日々大量に送られてくるネルーダへの郵便物を高名な詩人の家まで配達することだった。配達を通じて、詩人と青年の交流が始まる。
一点の曇りもない青空と潮騒の中で、青年は詩を覚え恋に落ち、ネルーダが見守る中で愛の詩を紡いでいく。
ルイス・バカロフの音楽が降り注ぐ太陽の光を引き立てる。アポロンの恩寵とも言うべきメロディは本作第二の詩であり、もうひとつの顔と言っていい。
キャストが、スタッフがそれぞれ邪心なく作品に奉仕した出来で、中でも主人公マリオを演じたマッシモ・トロイージは心臓疾患を抱えながら作品の完成を優先し、撮影終了の12時間後にこの世を去った。41歳だった。文字通り「生命を燃やした」のだ。
フィリップ・ノワレ演じるネルーダがラストに見せる表情も素晴らしい。あの時ネルーダは何を想い、何を感じていたのか。その答えはカプリ島の海のみぞ知る。