このレビューはネタバレを含みます
チリのワインとピスコを飲みながら。私には土地の思い入れが強すぎた。
イタリアのド田舎の島の青年が、逃避的に選んだポスト・マンの仕事で、詩人と出会う。
自分の感情の表し方も分からず、人に対して伝える言葉も持たない彼は、「女にモテている」というただそれだけの動機で、チリから亡命してきた詩人に興味を持つ。
亡命先の田舎で出会っただけの男に対し、詩人は次第に言葉を交わす。
詩を教え、隠喩を教え、彼に産まれた恋を共に説く。
詩人が彼に手渡した一冊の本。
『隠喩の勉強に役立つ。』
本はただのノート。詩人は彼の本に、
『私の親友で、同志に』
とだけその白紙のノートに書き記す。
田舎町で、自らが囲まれた島の美しさすら気付かなかった男は詩人となり、人の美しさを、尊さを、そして自分の島の美しさを知っていく。
一時の亡命先を去った詩人と、詩人に残された男と、その周りの人々。
次第に時は経つ。詩人がいたからこそ生まれた恋は、結実し、その後も時を送る。だが、男はいつまでもそこにいることはできなかった。
彼は生涯詩人を忘れなかったが、彼は詩人に再会することの無いまま、その生涯を終える。
再びその地を訪れた詩人が知り、見て、聞いたものとは。
詩人の親友であり、同志が、詩人に遺したものとは。