赤星権蔵

イル・ポスティーノの赤星権蔵のネタバレレビュー・内容・結末

イル・ポスティーノ(1994年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

チリのワインとピスコを飲みながら。私には土地の思い入れが強すぎた。



イタリアのド田舎の島の青年が、逃避的に選んだポスト・マンの仕事で、詩人と出会う。

自分の感情の表し方も分からず、人に対して伝える言葉も持たない彼は、「女にモテている」というただそれだけの動機で、チリから亡命してきた詩人に興味を持つ。

亡命先の田舎で出会っただけの男に対し、詩人は次第に言葉を交わす。
詩を教え、隠喩を教え、彼に産まれた恋を共に説く。


詩人が彼に手渡した一冊の本。
『隠喩の勉強に役立つ。』

本はただのノート。詩人は彼の本に、
『私の親友で、同志に』
とだけその白紙のノートに書き記す。



田舎町で、自らが囲まれた島の美しさすら気付かなかった男は詩人となり、人の美しさを、尊さを、そして自分の島の美しさを知っていく。




一時の亡命先を去った詩人と、詩人に残された男と、その周りの人々。
次第に時は経つ。詩人がいたからこそ生まれた恋は、結実し、その後も時を送る。だが、男はいつまでもそこにいることはできなかった。


彼は生涯詩人を忘れなかったが、彼は詩人に再会することの無いまま、その生涯を終える。

再びその地を訪れた詩人が知り、見て、聞いたものとは。
詩人の親友であり、同志が、詩人に遺したものとは。
赤星権蔵

赤星権蔵