メランクさん

かがみの孤城のメランクさんのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
5.0
もう完全に悶絶しながら観賞しました。
あー本当に空いてる終わりかけ平日の夜でよかった。
普通に頭から嗚咽がもれてたと思うから。

私は去年、自分で作ったフリースクールを畳んだ人間なんで、
こころちゃんたちの気持ちが痛いほどわかるだけじゃなく、
「孤城」を作ろうとして断念したことが今も生傷としてヒリヒリしてる。

いや、新しい仕事で違う形で子どもたちと向き合いながら、
自分の力不足に蓋をするようにこの数ヶ月を過ごしてきた。
そのことに気づかされたというか、
まぁ本当に改めて彼らの苦しみを目の当たりにして、
その描写、展開のリアルさに悶絶した。

母親の精一杯寄り添おうとしてる感じや、
それでも苛立ちを隠せず子どもが傷つく感じ、
あの「名前呼び」で距離詰めようとして
全く子どもを理解しようとしない教師のリアルさ!
あいつはもう本当に会ったことあります!
そんでフリースクールって場所をこんなふうに映画ん中で描いてるのも斬新!
(業界的に正確に言うとあれはフリースクールというかいわゆる適応指導教室というやつで、自治体がごにょごにょごにょごにょ…)
親が繰り返し「無理に行かなくていい」って言ってるのも、
ただただ無理解な親を描くのとはまるで違っててすごいと思いました。

さらにうまいのは、まさに同じ学校内でたくさん不登校はいるのに、
彼ら同士でつながる機会はないということ。
そして彼らは決してコミュニケーション力がないわけではなく、
場作りさえちゃんとしてれば彼らは連帯できる。
それは自分でやった実感と全くたがわない。

会えなかった時点で時代が違うってことはわかったし、
アキがきたじまさんなんだろうというのは読めたけど、
なるほど、狼さんの置き方はうまいし、
最後にアキがルールを破ってしまうのに対し、
「ルール破りをチャラにする」って結論。
そう、まさにそういうことなんだよなと思う。

最後に登校しようってなるラストは、
やっぱり行かないでいいってしたら完璧と思って見てたのでまぁ仕方ないかって感じではあったけど、
そんでもどんな条件がそろえば「行く」ってなるかを提示した上で、
あのまま学校に通い始めるかどうかは描かれていない。
そんくらいでありがたかった。

とにかく本当に彼らは一人じゃない。
誰とどう出会うか次第で救いになる。
だから学校という場所に縛られずに、
彼らが安心できる場所を作っていくこと。
それは自宅だってありえるんだよ。
ってことを当人たちだけじゃなくて
大人たちにわかってほしいです。

不登校20万人時代の傑作です。