Filmarks試写会で観ました。司会の宣伝担当者さんは、今秋公開に向けてのプロモーションなので、積極的なレビューやSNS発信を推奨していましたが、公式プレスに掲載されていないキャストはオフレコなんだそうです。本当にそれでいいのでしょうか?
というのは、安西(西島秀俊)の元舎弟の存在感がハンパなく、個人的には最大の“推し”の要素だったからです。ところどころセリフを噛むほどのリアルなハイテンションぶりは、いい意味でかなり浮いています。
この作品の全般的な印象は、ガイ・リッチー監督のクライム・アクションの脚本を北野武監督の作品を意識して演出したような群像劇です。北野武監督のイメージは、俳優陣に引っ張られているかもしれません。ガイ・リッチー監督のようなハイスピードの展開ではないので、予告編で強調されているガン・アクションのリズムを期待すると、いわゆる「テンポが悪い」という印象になるかもしれません。ただ、個々のシーンをとても丁寧に描いているので、こうした群像劇にありがちな人間関係や時間軸で混乱するようなことがなく、登場人物の心情や言動もわかりやすくなっています。
ガン・アクションのシーンは中盤以降に展開されますが、ちゃんと弾丸の質量を体感できる描写になっていて、ガン・エフェクトのスタッフさんが活躍しています。美流(玉城ティナ)はオープニングの襲撃シーンであんなに臆病になっていたのに、〇〇に半殺しにされて覚醒したのか、ショットガンをぶっ放すサイコパスぶりが痛快でした。ただ、こうした犯罪劇に登場する女性のステレオタイプな描写の在り方は、そろそろ見直して欲しいと思いました。
浜田(三浦友和)のキャラクターが普通の説教くさいおじさんだったので、終盤の展開が平凡な印象でした。何か裏事情を設定して3人の少年たちとのひねった関係性を描いていれば、もっとスリリングなクライマックスを演出できたと思います。
試写会なのでスコアは甘めですが、最近の邦画としては、アクションと人物描写の双方のクオリティを追求した秀作だと思います。