いきなり映画の感想ではないが、本作を見終わり、終電に間に合うように六本木の夜道をダッシュしていた時に、すれ違いざま男性と肩がぶつかった。自分は当たらないように避けようとしたが、向こうが肩をぶつけてきた。
劇中にムロツヨシ演じる田母神さんが動画を撮影している時に、いきなり敵意をむき出しにドヤしてくる男が出てくる。私は以前にもこのようなことを経験していたので、観賞中も今の時代の空気感をよく捉えてるなぁと思ったし、観賞後も上記のようなことがあった。
私はピンボールのアームのように衝撃を受け流していたので、そのままダッシュし都営大江戸線に乗り込んだ。「なんでみんなこんなに余裕がなくなってるんだろう？そしてそれをなぜ対人にぶつけるのか？」と思いながら…。閑話休題。
いつも通りの底意地の悪い𠮷田恵輔監督がYouTuberを題材にしてることもあって、底意地の悪さに更に拍車がかかっていた笑
ゆりちゃんは前半はちゃんと田母神さんに感謝の意を伝えていたし、ところどころ𠮷田恵輔監督作にしてはツッコミどころもあったけど（例えばホテル代を全部負担してたとかはさすがに確認するだろと思った。常識や倫理観が欠如したキャラとはいえ）2人が確かな関係性を築き、楽しそうにしていたところやゆりちゃんがフックアップがきっかけで売れる過程はしっかりと描かれ、ニヤニヤしつつ楽しめる。
ただ田母神さんがYouTuberになり、ゆりちゃんと対立する過程、特にドッキリあたりはYouTubeのコメント欄にもあったように「いつまでやってんの？」と少し退屈な展開だった
でもそこからなんとも言えない気持ちにさせられる容赦ない展開が続き、眉間に皺がどんどん寄っていく…
登場人物それぞれに因果応報的な罰が与えられたとも見えるが、カタルシスは全くない。ラストも端から見れば本当に無様でそれこそ狂ってる光景のようにも見える…でも無様でも確かに輝いて見えた。
今作に比べれば「空白」は全然分かりやすい物語になっていたんだなと思う。本作の方が得体の知れない何か、現代の薄気味悪さを表現していると思った。
自分たちに何ができるのか？
簡単に言うと気持ちに寄り添うことが大事ということになるのだろうが。そんなことなどを色々と考えさせられる、それでいてエンタメとしてきっちり面白い。
今回は劇場で見逃しそうになったが、今見といて本当に良かった。𠮷田恵輔監督作はいつ見ても最高である
