おーもり

神は見返りを求めるのおーもりのレビュー・感想・評価

神は見返りを求める(2022年製作の映画)
4.0
逃げ出したくなる様なキツいイタい話の映画は、逃げ出せない劇場でみる意味がある。
それを再確認させてくれる凄い映画だった。
もう登場人物たちが会話している間ずっと、スクリーンの中に乱入して大暴れしたくなった。

何者でもないから、自分がどんな人間か知らしめたい。
そしてアイツも何者でもないんだから、どんな人間か知らしめたい。
キツく、イタく、みっともなく、醜くく、世知がない。
善意は悪意に、満たされた承認欲求は選民意識に変わる。誰もが抱えている欲望の溝にひっかかったが最後、ケリをつけるまでは抜け出せない地獄。
現役YouTuberが観たら正気を保っていられなくなるんじゃないか。

ムロツヨシ、岸井ゆきの両名の演技、表情ともに最高でした。
無邪気でくったくない庇護欲をかきたて、かつ嫌な冷めた視線が堪らないユリちゃん
ぐうと押し込めた想いを微笑みに変換し、ぶっ壊れる寸前で正気を保っていると思い込んでいる狂人ゴッティー。
田母神さんがゴッティーに変わる瞬間の「拾えよッッッッ!!!!!!!」のカタルシスったら半端がない。
GOD.Tとか何のひねりも無いアカウント名にも笑う。

会話はできるのに話が通じない。爆発寸前の想いはあるのに言語化できない。
ユリちゃんとゴッティーの当人たちだけだったら良かったのに。二人を囲む周囲の嫌なヤツ、嫌なヤツ、嫌なヤツ・・・。
人の努力をクスクスせせら笑うんじゃねぇ。他人の問題に善意溢れる味方と称して首突っ込むんじゃねぇ。神様が全員に天罰を下すことをずっっっと祈って観ていた。

一方で、会話不能な人間も居るよねって事を、目を背けず描いてくる。
なにか事情があるのかも。その人が悪い訳でもない。でも関わり合いたくない。
そんな自分の嫌な感情をがっちり掴まれて、見ろよホラって、ぐいと目を向けさせられてしまう。

観た後の虚無感というか、彼らに対する憂いというか、なんとも言えない感情に襲われる。とても居心地の悪い良い映画だった。