なおこ

神は見返りを求めるのなおこのレビュー・感想・評価

神は見返りを求める(2022年製作の映画)
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ポップな黄色のスチル写真とは裏腹に、
だんだん観ているこちら側からも笑顔が消え去り、只々次のシーンに移るのがゆううつになるような、陰うつ極まりない映画だった。

まずはこの映画に出てきたすべての役者さんに感謝の気持ちを。演じててもきっとむかむかしただろうに。人間の苦くて不味いところ…しっかりと味わわせてもらった。

YouTubeやユーチューバーが題材の話だけど、その枠にとどまらない。人間の欲求や、個人・集団で変わる人間の心理だったり、今の時代がありありと描かれているところにも着眼点があって、多様な見方ができそうな映画。ユーチューブが幼児にも浸透してるこの時代、こどもへの教育でも使えそうと感じた。
ユーチューブコンテンツを作る側も、見る側も、見ないから関係ないよと思う人でも、“メディア社会”を生きる現代人全てに必然的に関わりある映画だと思う。

スマホのせいで、ユーチューブのせいで。
と書くと、悪い面に傾きすぎ、もっと多角的に捉えなくちゃなと思う。良い点もあるはずだけれど、しかしこの映画を観おわった時ちょっとスマホから離れたいなと感じたのは本音。

そもそもユーチューバーって、
何を目的として動画をつくってあげているのか。その動機が大事だと思う。
誰かの感情を動かしたい?楽しませたり笑わせたり驚かせたり。
それとも自分が不特定多数から単純に認められたい?
ユーチューバーじゃなくても、承認欲求やサービス精神、そこまでたいそうでなくても誰かに反応をもらえることって嬉しいもの。人とのコミュニケーション、つながり。求める量は個人差あっても、人が生きていく上で欠かせない基本的な欲求。

でも、それがどれほどの量なのか。自分の幸せは何なのか。そもそも“やってて楽しいかどうか”。もうこれに尽きると思った。
まずは自分が楽しい!と思うことをやる。それで、それを一緒に楽しんでくれる人がいたらそれでいい。いいねとかフォロワーは質より量なのか?そうは思えない。不格好でもださくても、自分を本当の意味で支えてくれる最高のフォロワーがひとり、目の前にいることの方が幸福だと思う。承認欲求の暴走はこわいなと感じた。

表現者としての責任がどんどん増して、
最初はやりたくてやってたことが義務感や疲労感に包まれ始める。早くやめちゃえばいいのに自分自身がどうしたいのかさえも、思考停止してて。

“考えるのをやめた時に凡庸な悪におそわれる”というハンナ・アーレントの言葉が、頭の中によみがえる映画。
なおこ

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