Jun潤

鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカーのJun潤のレビュー・感想・評価

3.1
2022.05.26

どんなクソ映画もまずは観てから、どうもクソ映画鑑定人です。
シリーズ一作目は原作既読で見て、出来はそこそこでしたが、シリーズ2作目となる今作もなかなか豪華なキャスト陣ということで今回鑑賞です。

原作の序盤部分を映像化した一作目の続編、それもボリュームのある原作の完結までを二部作で描くという、なかなか無理のある企画ですが、果たしてその出来は。
一作目未登場のキャラもいて、そのキャラもイキイキと動くので、不安は高め設定。

かつて亡き母を蘇らせるために行った人体錬成の代償に、右腕と左脚を失ったエドと、身体全てを失ったアルのエルリック兄弟は、自分達の身体を取り戻す術を探す旅を続けていた。
国家錬金術師に必要な査定のためにセントラルへと向かう道中、エルリック兄弟は東の大国・シンから来た謎の男・リン一行と出会う。
不老不死の法を求めるリン一行と交戦となるが、そこへ軍の重要人物を狙うテロリストと、ホムンクルス・エンヴィーが現れる。
ホムンクルスに不老不死の法を見出したリン一行はエンヴィーと共に森へと消える。
無事セントラルに到着したエルリック兄弟は、マスタング大佐と再会し、列車に乗り合わせた軍の重要人物が、国の頂点にいるキング・ブラッドレイ大総統だったことを知る。
その時、セントラルでは“傷の男(スカー)”による錬金術師連続襲撃事件が起きていた。
エルリック兄弟の前にもスカーが現れ、交戦となる。
エルリック兄弟に待ち受けるのは、かつてスカーを含めたイシュヴァラの民殲滅戦の禍根と、国を揺るがす大きな謎の一端だったー。

う、う〜〜ん、うん。び、微妙…。
とは言え予想通りっちゃ予想通りだったので、言ってしまうと期待せずに観れば衝撃は小さめ。

話としてはエルリック兄弟とスカー、リンとの出会いを中心に、三者それぞれの視点から『鋼の錬金術師』世界観を映し出していくもの。
一作目には無かった原作の話を、新キャラ紹介や既存キャラとの絡みへと繋ぐ手法には関心を惹かれます。

一作目でも印象的でしたが、CGの出来には相変わらず目を見張るものがあります。
おそらくCG合成をする上では昼間の場面よりも夜の場面の方が違和感のない仕上がりになりますよね。
前作も今作も昼間のCGシーンに気合が入っており、光度が高く観やすい場面に迫力を与えていました。
原作がファンタジー世界であり、その再現に必要不可欠なのもまたCG。
遠目から観る世界観の出来は、画面全体が全てCGだからこそなのか、おそらくは邦画の中でも突出しています。
近目で観る、おそらくグリーンバックで撮影したであろう場面については、まだまだ改良の余地あり。

クレジットを観る限り、想像の範囲ですが、今作はCG制作プロダクションが自身の制作力をアピールするために企画を持ち込み、より集客率が高くなる可能性のある原作とキャストという理由で、今作の制作に至ったのでしょう。
背景を想像してみると、将来の邦画界への投資と捉えて観る価値はあります。

問題はここからですよ。
キャラクター同士が紡ぐドラマについて。
ここはもう仕方ない、漫画原作の実写映像化作品には必ず付いて回るもの。
キャラクターやドラマよりも漫画のあらすじをなぞることに必死になっています。
そこに付随するCGやアクションなどの、おそらく予算でしょうか、リソースが割かれていないため、場面ごとの力の入れ具合のバラ付きと、ファンが望んでいるものとの乖離が生まれてしまう。
撮影や再現が容易な、安っぽく見えてしまうキャラ同士の薄い会話が展開され、漫画のコマとコマの間を埋める描写にこだわっていないため、肝心な場面でも冗長さが浮き彫りに。

作中では復讐の連鎖や博愛の精神、親子愛などのメッセージ性を受け取れる場面がありますが、原作漫画の根底にある「等価交換」という絶対的なテーマを描けていないのだから、無い土壌の上には何を植えても実りません。

『鋼の錬金術師』自体がキャラもストーリーも知名度が高く、先の展開もどういうキャラクターなのかも知られているからこそ、実写ならではの映像や演技でもって、作品に新たな付加価値を産むことが実写映画化の意義。
知名度やコンテンツ力におんぶに抱っこのままでは、実写映画化そのものの魅力が遂には無くなってしまいかねない。
個人的に密かに楽しみにしているため、ぜひとも制作陣には頑張っていただきたい。

キャストについてはCGと同じくらい安定感と新たな魅力に溢れています。
特に本郷奏多渡邊圭祐山田裕貴舘ひろし山本耕史新田真剣佑が良い。
すでに確立されているキャラクターの魅力に、役者本人の表情と演技力を加えて見事に実写化が実現、プラス役者自身の個性も表現していました。
他の作品との関連で言うと、『カムカムエヴリバディ』文ちゃん役本郷奏多、『ちむどんどん』博夫役山田裕貴の朝ドラ勢、『仮面ライダージオウ』のウォズが帰ってきた渡邊圭祐、『KAPPEI』『シン・ウルトラマン』でも暴れ足りない山本耕史に、『アルキメデスの大戦』よろしくCG世界でも確固たる存在感を発揮する舘ひろし、『るろうに剣心 The Final』でも主人公の宿敵を演じた新田真剣佑と、どんな作品にも全力投球な役者たちにただただ脱帽。

個人的には完結編二部作の内の一作目としての締め方に納得がいかない。
原作のあの辺りで終わるのであれば、「エドの無事は如何に!?黒幕はまさか!?真の完結編へ続く!!」が理想的なはずなのに、おそらく事務所の都合でしょう、締まりが緩くなってしまった。

後編『最後の錬成』は来月6月24日公開。
今作時点でようやく原作の半分というところで、まだまだ未登場のキャラもいるし、終盤に向けて全てがクライマックスと言っても過言ではない名シーンの数々が残っている状況。
あと一作で全て描ききるというのは、今の邦画界には可能なのか、どうなる完結編?
期待せずに待ちます。笑
Jun潤

Jun潤