耶馬英彦

スイート・マイホームの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

スイート・マイホーム(2023年製作の映画)
3.5
 ホラー映画である。しかし少し動機が弱い。序盤を観たら、大体その後の展開が予想できる作品で、予想通りに進むのだが、動機が弱いからあまり怖くない。むしろミステリーとして鑑賞すると、よくまとまっているし、終わり方もなかなかいい。原作は未読だが、本作品を観る限り、原作もしっかりまとまっているのだろうと思える。
 ジャンプスケア(大きな音や衝撃的な映像)をほとんど使っていないのは好感が持てる。本作品のいいところは、出演者の態度や表情で怖さを醸し出しているところだと思う。同じ斎藤工監督の2017年の映画「blank 13」の演出に似ているところがある。誰もが小さな幸せに縋りつくようにして不幸な人生を生きるのだ。
 その演出に応えた役者陣は、いずれもよかった。特にほぼ出ずっぱりの窪田正孝は、鍛え上げられた肉体で、役柄は全く異なるが、昨年の映画「ある男」と同じくらいの冴えた演技だったと思う。松角洋平が演じた甘利の気持ち悪い役柄が途中まで観客をミスリードするのも洒落ている。同じ苗字の政治家はもっと気持ち悪い。
 ミステリーとしてはかなり不気味で、それなりに面白かった。
耶馬英彦

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