耶馬英彦

HOW TO BLOW UPの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

HOW TO BLOW UP(2022年製作の映画)
4.0
 かなり面白かった。石油パイプラインの爆破計画が着々と進む中で、参加者それぞれの事情が明かされていく。その展開が面白く、しかも緊迫感があって、物語に引き込まれていく。
 何の訓練も受けていない素人たちが、石油開発のせいで被害に遭ったり、政府と巨大資本の癒着に怒りを覚えたり、あるいは成り行きだったりという、いろんな理由で集まり、首謀者であるソチの計画を進めていく。
 それぞれに覚悟の度合いが違うし失敗もあるが、必死という点では一致している。みんなが一生懸命に役割を果たすことで、荒唐無稽に思われた計画が、現実性を帯びてくる。もしかしたら、本当に成功するのか。カネもない、技術もない、しかし考える時間だけはある。だったら、チャンスはある。

 素人たちの描写がリアルで、もしかしたら自分にも出来るのではないかと思わせるほどだ。本作品について、テロを助長するとFBIが警告を出したのも頷ける。作品の中でFBIがとんだ間抜け扱いをされているのも、警告を出した理由のひとつかもしれない。FBIも日本の警察と似たようなレベルで、市民の安全よりも警察の威信を大事にする。

 物語が進むにつれて、計画は徐々に明らかになっていくが、本当の目的と計画のコアな部分が明らかになるのは、最終盤である。ソチの頭のよさに、快哉を叫びたくなる。仲間に対して冷徹に見えたソチが、実は一番仲間の安全を考えていた訳だ。頭脳明晰な彼女にとっては、計画は爆破だけでなく、準備から後始末までのすべてが計画だったのだ。

 俳優陣はいずれも素晴らしく、土埃が眼前に漂ってくるような映像も見事だし、劇伴もいい。上映館が少ないのがもったいないと思えるほど、よく出来た作品である。
耶馬英彦

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