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男たちの挽歌 4Kリマスター版のtakaoriのレビュー・感想・評価

3.8
2024年202本目
劇場74本目
「午前10時の映画祭」にて
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ジョン・ウー、ツイ・ハーク、チョウ・ユンファ、レスリー・チャン、ティ・ロン...、香港映画界屈指の才能が眩いばかりの火花を散らし、さらに彼ら自身のリアルな信頼と友情が奇跡のケミストリーを生んで誕生した史上最も重要な香港映画の1本。
それまでカンフーばかりだと思われていた香港映画の飛躍的なレベルアップを衝撃と共に世界に知らしめただけでなく、その眩暈を誘うほどの激烈なガン・アクションで、後のすべての映画における銃撃戦を決定的に変えたと言っても過言ではない。これぞ、映画史に名高い<香港ノワール>の最高峰にして、永遠に語り継がれる侠気と銃弾の伝説。『男たちの挽歌』は、すべての映画ファンが見なければならない必修科目である。
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4Kリマスター版のこの紹介文は、1986年の公開当時における本作の評価を熱気とともに伝えてくれる名文だ。今でこそアクションもストーリーも陳腐に見えてしまうが、香港映画がハリウッドにも比肩しうることを示した当時の熱狂は、映画館の大スクリーンで鑑賞することで多少なりとも共有できた気がする。
ポスタービジュアルにもなっている、チョウ・ユンファが偽札で煙草に火をつけるショットまでのオープニングの流れは最高にクールでカッコいい。そんなユンファ演じるマークや、もう一人の主人公ホーが罠にハマって全てを失い、身を滅ぼしながら泥臭い復讐を遂げるという流れもカタルシスがある。が、それ以上に今この映画を見て思うのは、スクリーンの向こう側にしかいないファンタジーとしての「刑事」や「ヤクザ」が醸し出すカッコよさというのは、結局大人になれない男の幼児性の表象でしかないよなぁ、ということだ。加えて、追われるヤクザに追うヤクザ、さらにはそれを追う刑事、という男同士の争いの構図は、決まって男同士の疑似恋愛のラブストーリーに陥ってしまう。「ホモソーシャル」が「ホモセクシャル」に近似していくというお決まりのパターンだ。それがダメだというわけではないが、2020年代のはるかに複雑化した映画を見ている我々の感覚からすると、こういう映画を無邪気に楽しめた時代がうらやましい、という気もしてくる。
こんな頭でっかちの理屈をこねるまでもなく、銃で腹を撃たれた男がいつまでもピンピン走り回っていたり、右足が義足のマークが平気で大立ち回りしたり、マシンガンから無限に弾が出たり、オートマチックなのに弾切れに気付かなかったりと、もうツッコミどころのオンパレードである。が、これだけダメ出しポイントがあっても、「男のロマン」を鮮やかに描いた名作だという評価を取り消す必要があるとはまったく思わない。楽しい映画だ。
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