ふじこ

リメンバー・マイ・ストーリー2のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

続いてたのか…。[ リメンバー・マイ・ストーリー ]で暴力的な家から離され、里親の下に預けられたゾーイ。
荒れていたものの、最愛の弟との再開を果たし、よい方向へ行くかと思っていたのだけれども、それでも人生は続くのだなぁ…って感じる続編。

里親さんはゾーイも通う小学校の先生で、弟べナイアと安心出来る環境での生活で これが"幸せ"なのかも…と思っている。
母親との監督下での最後の面会、突然やって来たべナイアの里親になる人、ゾーイにも内緒で勝手に連れて行ってしまう。ただでさえ心が乱れやすい年頃、環境だと言うのに、彼女の意思を置き去りに大人が勝手に色々決めてしまう。彼女の人生の事で、彼女の愛する弟の事なのに。
それでまた荒れるようになってしまい、里親さんは反対するものの実の母親も一緒に受けたセラピーで感情を穏やかにする薬が処方される。

恐らく荒れたゾーイのためだとは思うけれど、2人で会った母親は愛していると繰り返しながら、べナイアを取り戻す為に戦うわ と言う。私のことは?私を取り戻したくないの?と訊くゾーイに、もちろんよ、ただあなたはもう子供じゃない。あなたはもう大人、と返す母親。
まだ小学生だろ…。勝手に大人だと言ったり、それなのに何の権利もなく弟は連れて行かれて、こんな理不尽ってないよなぁ。
どういうつもりでそんな事言ったんだろう。前作を見るに家事とか弟の世話とかさせてたからかな?
面会の時も、ベナイアの方ばかり見て抱き締めたがるのも弟だけだったけど…。

あなたは竜巻の中にいても、竜巻に心をズタズタにさせることもできればあなた自身がその影響を選択できる
ママの物語はあなたの物語である必要はない、あなたは未来を変えられる
憶えておいてね

ねえ知ってる?宇宙にも竜巻があるんだよ
星は竜巻から生まれるんだって すっごく強い風なのよ
すっごく危険で、生き延びるのが大変なんだって
でも結局 星が誕生するの
すっごい強い風の中から
私たちは星

どれだけ嘆いて怒って暴れても、里親の先生はずっとゾーイを見ていてくれる。
彼女に出来る範囲の中でゾーイの為に、彼女を気遣ってくれているのは観ていて分かるんだけど、その中心にいるゾーイの怒りも不安も不信感も分かるんだよね…。こんなはずじゃなかった って思う自分の人生を、何一つ自分自身でコントロール出来ていないのって怖い。
ベナイアとの約束の隔週面会、帰りの車の中では泣いちゃうものの、次第に穏やかになっていく。
そして母親の親権についての聴取会、ゾーイや実の母親、里親さんらが集まってゾーイをどうするかの話し合いが行われる。

その昔、心をズタズタにされた少女がいた
考えもしなかった
こんなにも多くの山や谷を通ることになるなんて
でも内なる私を壊すことはできない
誰も私の未来を決めつけられない
試練がやってきても 私には選択肢がある
「どの方向に進むか」という選択肢が

私たちは星
炎と嵐ーーそして混沌から生まれた
風が吹き荒れてーー誰も傍にいられない
全てが奪われてしまう


子供たちが思い思いに描いた絵を提出して教室を出て行く。
一人少し沈んだ様子の男の子が先生の机に白紙の紙を置き、ちょっと待って と呼び止められる。
長い金髪の女性がしゃがみ込んで目線を合わせ 他人と住むのは辛いよね、と声を掛ける事でその子もまた里子であるが分かり、でも どうなりたいかはあなたが決められるのよ、誰にも決めさせちゃダメ と語り掛ける。
その子は少し笑って、ありがとう ゾーイ先生 と答える。


でもいつかーー
いつかーー
私たちは輝くの

実の母親は親権を失い、恐らく里親の先生の下で育ったゾーイ。
前半で拾った石に何重にも円を描いて、中心に自分の名前を書いた作品を"竜巻だ"と言ったゾーイに里親の先生が何気なく言った、"宇宙にも竜巻ができるの知ってた?星は竜巻から生まれるのよ"という言葉が、彼女の心の琴線に触れたのかベナイアとの交流で弟にも教えてあげるし、その後もずっと彼女の心の中に残り続けたのかな。
自分の経験から同じような境遇の子に寄り添う教師になっているのに胸が熱くなる。
短編だから細かい描写は抜きにしても、構成と台詞回しが良かったなあ。
誰も信じられないまま誰も信じないで母親みたいな人生になってた可能性もあるんだよな…。
自分の人生はクソだって認めるのも辛いけど、そこから何を選び取って行くのか。自分にはそうする価値があるんだって、成功体験や愛される事の実感って大事だよな…。
ふじこ

ふじこ