都部

映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 7人の魔法使いの都部のレビュー・感想・評価

3.6
旧劇本編を再構築するにあたり適切な取捨選択が成されている良作で、のび太と美夜子のドラマに焦点を絞り、それを並列して語ることで日常/非日常の距離感/価値観が徐々に融和していき、その二つが重なる最後に物語を爽快に結実させる手際は良好だった。

ひみつ道具:もしもボックスによる軽率な世界改変の責の重さを描いているのもポイントで、旧劇以上に国家/惑星全体を巻き込んだ差し迫った危機として魔界の案件が描写されているのが印象的だ。日常を脅かす形で異常気象が到来し、また魔界側からの妨害の働き掛けも序盤〜中盤より成されるから事の重大性がより伝わりやすくなっている。

序盤の魔法世界の表現も多様と化しており、センス・オブ・ワンダーを画で理解させる努力がそれからの物語の転調の落差を際立たせているし、軽はずみな夢想が人類全体に命の危機を迫る羽目になることで終盤ののび太の立志がドラマチックなものとして昇華されている。

美夜子の物語に触れると母親の物語に余白を持たせることで当事者意識を帯びた行動原理を強固なものにしているのが賢明で、物語の本筋を阻害しない形で追加されたドラマが余韻を与えている。

全体的に登場人物の感情の機微に奥行きが生まれていましたし、良質な作画による星間/魔界の風景描写も良質で、シリーズの中でも多くの要素が高水準な形で理路整然と纏められた作品でした。
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